山形のニュース

<東北の道しるべ>エネルギー兼業農家増加 農地に太陽パネル

ソーラーシェアリングで太陽光発電に取り組むサクランボ農家の秋葉さん=東根市羽入西野

 コメや野菜を生産する傍ら、小規模発電を手掛ける「エネルギー兼業農家」が東北で増えている。農地の一角に太陽光パネルなどを設置し、自然の恵みから農作物と電気を同時に生み出し、売電により収入アップも図る。都市住民から協賛金を募って初期投資費を工面し、謝礼に新鮮な農作物を届ける仕組みを採用する農家もいて、都市と地方の新たな交流が生まれている。

 鶴岡市の特産品「だだちゃ豆」を生産する22代目農家の木村充さん(52)は農機具庫の屋根に出力10キロワットの太陽光パネルを載せ、「おいしい発電所」と命名した施設を9月に稼働させる。
 計画によると、年間発電量は9万キロワット時で東北電力に全量売電する。収益は年間28万円を見込み、農業収入にいくばくか上乗せする。
 東京電力福島第1原発事故後、「このまま何もしなくていいのだろうか」と思案してきた。「自然エネルギーを少しでも増やしていきたい」と考え、半ば突き動かされるように発電事業に乗り出した。
 初期投資は250万円。1口5万円で集めている協賛金で工面する。協賛者には5年間、謝礼として1口当たり1万1000円分のコメとだだちゃ豆を送る。自分一人の発電事業ではなく、協賛者との共同プロジェクトにする狙いもある。
 木村さんは「食べ物を作り、心や体にエネルギーを供給するのが農家の仕事。さらに発電もし、生活のエネルギーも提供する農家を目指したい」と話す。
 東根市のサクランボ農家の秋葉慶次さん(65)は2015年、田んぼの真上に太陽光発電所を開設した。一つの日差しで農業と発電を両立させる「ソーラーシェアリング」と呼ばれる。
 支柱の上に315枚の太陽光パネルが並ぶ田んぼは異彩を放つが、イネの生育は周囲と遜色なく順調だという。年間3万キロワット時以上を発電し、東北電に売電している。
 9月には別の遊休農地でもソーラーシェアリングの発電所を稼働させ、ワラビ生産を始める。初期投資1500万円のうち500万円を協賛金で賄う。謝礼はもちろん、サクランボの高級品種「佐藤錦」だ。
 秋葉さんによると、自然エネルギー発電は収入増につながるため関心を寄せる農家が少なくないが、「初期投資が大きく、尻込みしてしまう」という。
 期待するのは協賛金システムの広がりだ。秋葉さんは「協賛金をもらい、農産物でお礼する。都市住民とそんな支え合いの関係ができれば、エネルギー兼業農家はもっと増えるのではないか」と先を見据える。

◎地域の動き必要

<山形市の環境団体「やまがた自然エネルギーネットワーク」代表・三浦秀一東北芸術工科大教授の話>
 日本の自然エネルギーは、地域外の企業が山を削ってメガソーラーを建設するなどして広がっているが、地域での取り組みこそが重要だ。欧州では、個々の農家が自然エネ発電の担い手になっている。農業を維持するという点からも、太陽光に限らず小水力発電なども含め、農家が自然エネを「生産」する動きを広げていく必要がある。


2017年08月21日月曜日


先頭に戻る