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<米国流 直売経済>共同運営 日本に合う

エリザベス・ヘンダーソン ニューヨーク市生まれ。1989年からCSAの実践、普及に取り組む。現在、ニューヨーク州ロチェスター地域でピースウォーク有機農場を運営。共著「CSA 地域支援型農業の可能性」は日本や中国、スペインなど50カ国以上で翻訳された。

 生産者が流通業者を通さずに、食材を消費者に直接販売するCSA(地域支援型農業)が米国で1986年に誕生し、30年余りが経過した。長年、普及活動に奔走してきた著述家で農場主のエリザベス・ヘンダーソンさん(74)は、複数の生産者による共同運営方式のCSAが東日本大震災の被災地をはじめ、日本の生産現場に適していると提案する。(聞き手は報道部・門田一徳)

◎CSA先進国の今(7完)インタビュー/著述家・農場主 エリザベス・ヘンダーソンさん

 −30年前と今のCSAの違いは何か。

<多様性生まれる>
 「厳格な基準や定義を持たないことが多様なCSAを生んだ。素材は牛肉、豚肉、ラム肉、乳製品、魚介類、ワイン、パン、果物、生花など多彩になった。ほとんど全ての食材を会員に通年提供する農場もある。配布期間、サイズ、支払い方法もさまざまだ」

 −CSAのルーツは日本で1970年代に始まった「産消提携」とも言われている。
 「CSAは生産者と消費者が自分たちに適した形にアレンジして構わない。産消提携は基準や運用が厳しい。産消提携に創設時から携わる日本の知人が『若い世代が集まらない』と心配していた。原因はその厳しさにあると思う」

 −リスクと理念の共有など、米国のCSAも要件が厳しいと日本では思われている。最低条件は何か。

<最低条件は二つ>
 「一つ目は生産者を支える仕組みであること。二つ目は新鮮で高品質な地域食材を生産者・生産団体と消費者が直接取引すること。この2点を満たせばいい」

 −東北の被災地では多くの生産者が販路の回復に苦労している。
 「販路が限定されると、災害時のリスク分散が難しくなる。取引先の集中は結果として流通業者に強大な力を与えることになる。CSAは、そのリスクから被災地の生産者を守ることになる」

 −日本は単一栽培が一般的だ。取り組みやすい形態はあるか。
 「台湾にはコメと野菜の生産者、漁業者が連携して毎週食材を提供するCSAがある。この方式だと、それぞれの生産者が自分たちの仕事に専念できる」

 −米国の都市部では地域食材が飲食店の看板商品になっていると聞いた。CSAの課題は何か。
 「CSAはこの10年で急速に広まった印象だ。ブローカーが生産者から食材を安く買い、農場と偽って消費者に販売するケースも出ている。カリフォルニア州はCSAという言葉の使用を生産者と生産団体が直売する時に限定する規制に乗り出した」

 −国際社会の自由貿易を模索する動きにどう向き合うべきか。

<消費者が理解を>
 「自由貿易は自分たちの企業利益のみ追求する大企業しかもうからず、地域経済を衰退させる。小規模生産者を支える重要性を、消費者に理解してもらうことが大切だ」

[産消提携]農薬の過剰使用や公害などを背景に1970年ごろ、日本の都市部を中心に始まった運動。生産者と消費者の密接な連携を前提に、有機農産物などを直接取引する。農産物の全量買い取り、取引価格の固定、農作業の手伝い、自主配送などが基本条件とされる。


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2017年08月21日月曜日


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