宮城のニュース

<311次世代塾>発災直後の問題考える

◎第6回講座詳報

 東日本大震災で起きたことに向き合う通年講座「311『伝える/備える』次世代塾」の第6回講座が19日、仙台市宮城野区の東北福祉大仙台駅東口キャンパスであった。発災直後の問題を扱う第1フェーズの最終回「考える」。震災を引き起こした地震のメカニズム、がれき処理、津波訴訟の各テーマについて、東北大災害科学国際研究所教授の遠田晋次さん(50)、宮城県土木部次長の笹出陽康さん(57)、弁護士(仙台弁護士会)の佐藤由麻さん(37)の解説を聴いた。

◎東北大災害科学国際研究所教授 遠田晋次さん(50)/津波警戒 今後も必要

 震災発生直後の報道でマグニチュード(M)8.9と聞き、耳を疑った。宮城県沖ではM7.5規模の地震が三十数年間隔で起き、そろそろ起きるといわれていた中、複数の震源断層が連動して動き、想定を超える巨大地震になった。
 余震は今も続いており、太平洋プレート内部で起きるアウターライズ地震に注意してほしい。代表例が昭和三陸地震(1933年)で、明治三陸地震(1896年)の37年後に起きた。津波への警戒は今後も必要だ。
 海溝型地震と並び、日本列島を襲うもう1種類の地震が内陸地震。震度7の激震が身構える猶予もないほど突然起き、局地的に大きな被害をもたらす。耐震補強や家具の固定などで命を守ってほしい。
 仙台市の直下にも長町利府線断層帯がある。内陸直下型の大地震を起こす可能性があり、熊本地震は人ごとではない。自然現象を理解し減災につなげてほしい。

◎宮城県土木部次長 笹出陽康さん(57)/がれき処理 最優先で

 震災直後からの3年間、がれき処理の担当課長をしていた。がれき総量は県内で生じる一般廃棄物二十数年分に上る量。「がれき処理は復旧復興の一丁目一番地」と最優先の対応が求められ、大手ゼネコンに一括委託して取り組んだ。
 処理施設の整備に時間がかかり、本格稼働したのは取り組み開始から約1年後。高さ25メートル以上に積み上げられたがれきの山からの自然発火が年間約20件起き、「処理が遅い」「なぜ進まない」との批判も噴出した。
 これを受け国は県外での広域処理に着手。全国の支援で処理が加速し、目標とした3年以内に処理を完了できた。一方、目の前からがれきが消え始めると、遠方までのがれき搬出や処理コストなどに疑問の声も出るようになった。
 震災を経験したからこそ、次起きる災害への備えや発生時の支援に生かせることがある。将来の防災・減災のため震災の記録と記憶を次世代に引き継ぎたい。

◎弁護士(仙台弁護士会) 佐藤由麻さん(37)/再発防止の指針大事

 石巻市大川小など、震災による津波犠牲者の遺族が原告となった宮城県内の四つの訴訟を例に考えたい。
 争点は、震災前の備えに落ち度はなかったか、津波の襲来を予見できたか、危険回避の対応は十分だったかの3点に集約される。裁判所の判断は事案ごとに異なる。
 なぜ家族が亡くならなければならなかったのか、多くの遺族は真実の解明を求めた。しかし被告には防御意識が働き、何があったかを積極的には明かさない。
 謝罪や償いという点でも原告と被告の間には溝がある。たとえ和解が成立しても、被告は和解の中で謝罪していると考え、片や原告は和解内容に沿った謝罪が別途あるものと期待する。結果、今なおわだかまりが消えない事例もある。
 大切なのは裁判の勝ち負けを超えて、犠牲を教訓として後世の防災対策に生かすことだろう。再発防止の指針となる判断が裁判には求められている。

【写真】遠田教授の講義では、巨大地震の発生メカニズムが分かりやすく解説された

◎受講生の声

<現場で教訓伝承>
 教師を目指す私にとって津波訴訟の講義は重く響きました。保育者や教師の災害に対する備えや臨機応変な対応が問われたからです。痛ましい犠牲を無駄にしてはいけない。学んだ教訓を現場で生かせたらと思います。(仙台市宮城野区・宮城教育大3年・20歳)

【顔写真】角田愛沙美さん

<油断禁物 心掛け>
 地震のメカニズムの講義が印象深かったです。余震は震源周辺だけでなく、離れた地域でも起こると学びました。「いつでもどこでも油断禁物」と心掛けたいです。地震への備えを家族で確かめ合い、非常食も備蓄します。(仙台市青葉区・東北大3年・20歳)

【顔写真】三木拓弥さん

<経験生かし支援>
 前例のない規模の震災がれきの処理が「遅い」「コストが高い」との批判を受ける中で進んだことを知りました。復興にがれき処理は欠かせません。次の災害を見据え「経験者だからできる支援がある」との言葉を大切にしたいです。(仙台市青葉区・大学事務員・24歳)

【顔写真】照井あゆみさん

<メモ>「次世代塾」は、河北新報社などが震災の伝承と防災啓発の担い手育成を目指して企画した年15回の無料講座。次回は9月2日。連絡先は同社防災・教育室=メールjisedai@po.kahoku.co.jp
 運営する311次世代塾推進協議会の構成団体は次の通り。河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工業大、宮城学院女子大、尚絅学院大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構


2017年08月25日金曜日


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