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<災を忘れず>「次」の津波へ備え訴え

東日本大震災の現場写真や収集した被災物を前に、来館者に説明する山内さん(右)

 地震や風水害などの天災、戦争や市街地の火事といった人災。生死を左右しかねない惨事の発生は人々に大きな衝撃を与えるが、その爪痕や傷痕が歳月の中で癒えるにつれ、風化は進む。「大切な記憶を継承する」。熱い願いが込められた東北各地の施設や地域を紹介する。

◎東北の施設・地域巡り(7完)リアス・アーク美術館(気仙沼市)

 東日本大震災後、その惨状を形容し「未曽有」「1000年に1度」「想定外」などの言葉が世にあふれた。「被害は繰り返すと、さんざん言ってきたのに」。リアス・アーク美術館の山内宏泰学芸係長(46)は「怒りを覚えた」と話す。
 三陸地域は、津波の常襲地帯。歴史・民俗系の展示も行う同館では、2万人以上の死者が出た明治三陸大津波(1896年)の実態に迫る企画展を2006年に開くなど、以前から地震への備えを訴えてきた。
 震災で住まいが流失した山内さんをはじめ、館の職員の多くは被災。それでも学芸員らは連日、気仙沼市と宮城県南三陸町を歩き回り、被害状況を写真とともに克明に記録していった。同館常設展示「東日本大震災の記録と津波の災害史」は、その成果だ。
 陸上に乗り上げた船や、枕木ごとめくれ上がったレール。頑丈そうな建物の鉄筋鉄骨も無残にえぐられ、津波の破壊力が見て取れる。キャプションと併せ、港町に散乱した魚の臭いまで伝わってきそうだ。
 展示室内には写真203点のほか、明治三陸大津波を描いた当時のイラストのパネルなど歴史資料137点を掲示。ひしゃげた軽トラックや熱で膨らんだドラム缶などの被災物155点も、展示空間を含めて一つの芸術作品とみなす「インスタレーション作品」のように置かれている。
 泥にまみれた電気炊飯器やカメラ、縫いぐるみなどそれぞれに付けられた説明文は、創作であり客観的事実ではない。だが、被災者が失った大切な過去を呼び起こす、真実でもある。
 「入館者にはいつも『学びなさい。覚えなさい。人生を変えてほしい』と話しています」と山内さん。津波の発生は防げないが、高台への避難などで、被害を減らすことはできる。「震災の展示を、明日の出来事として見てほしいんです」

[メ モ]気仙沼市と南三陸町で構成する気仙沼・本吉地域広域行政事務組合が運営。常設展入場料は一般500円、大学・専門学校生400円、高校生300円、小中学生150円。開館時間は午前9時半〜午後5時。月、火曜日と、祝日の翌日(土、日曜日を除く)は休館。


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2017年08月25日金曜日


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