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<リボーンアート・フェス>「生きる術」名称に託す 制作委員・中沢新一さんに聞く

中沢新一(なかざわ・しんいち)1950年生まれ。山梨市出身。東大大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。中央大教授、多摩美術大教授などを経て、明治大野生の科学研究所所長。著書に『チベットのモーツァルト』(サントリー学芸賞)『哲学の東北』(斎藤緑雨賞)など。

 東日本大震災で被災した石巻市の牡鹿半島を主な舞台に、9月10日まで開催中のアートと音楽、食の総合祭「リボーンアート・フェスティバル(RAF)2017」。思想家で人類学者の中沢新一さんは、RAFの制作委員であり、その名付け親でもある。被災地での、新たな試みについて聞いた。(聞き手は石巻総局・古関良行)

 −「リボーンアート(Reborn−Art)」の名称にはどんな意味がありますか。
 「Artはラテン語のArs(アルス)が語源で、技や術(すべ)を意味する。Rebornは『生まれ変わり』『再生』。だから『Reborn−Art』は『再生のための技』であり、『生きる術』の意味を込めた」
 「石巻は人口構成が大きく変わりつつある。被災して沿岸部を離れた住民がいる一方で、旧市街地などには外から若者が移り住み、やる気に満ちている。都会の生活に疑問を感じ、生活を再構築しようと集まった人も多い。自分自身が生まれ変わり、石巻でどんな生活をつくるのか。その術としてArsに気付いた」
 「多くのものが失われた地で、人口構成もシャッフルされた地で、生き方を考える。それがRAFの大きなテーマだと思う」

<商業的な枠超える>
 −被災地で開く芸術祭の意義は大きいですね。
 「それは大きい。他の地域でも芸術祭はあるが、被災地でこれだけのアートフェスは他になく、違うものにしたかった。観光振興や交流人口の増加など経済効果を生み出すことは大切かもしれないが、被災地でやる以上、商業的な枠を超えたものが大事だと思った」
 「各地の芸術祭は行政や交付金などに頼る面があるけれど、今回は音楽家の小林武史さんが提唱し、民間が主体なのがいい」

 −アートだけでなく、音楽、食もテーマです。
 「アートは基本的に個人で鑑賞するが、音楽は多くの人々が集まって聴く。集団性のある音楽をベースにした芸術祭こそ、被災地でやる意味がある。フランスでは夏になると、各地で音楽祭が開かれる。街中どこかでクラシックやフォークなどいろんな音楽が響く。そんな芸術祭はいい」
 「食にしても、海や山と深い関わりがある。時には災害をもたらす海と住民との関わりが、食にある。単においしいだけではない」

<賢治の思想 再構築>
 −29、30日には石巻市の中瀬公園特設テントで中沢さん脚本のオペラ「四次元の賢治」が上演されます。
 「東北とは付き合いが深い。感じるのは、先祖ら死者や森の動物など人間世界の外のものを、自分たちの暮らしの領域に組み込んでいる。生者と死者が一緒になって東北の文化をつくっている。金華山の修験道、七夕などは死者との対話が基底にある」
 「それを思想的に深めたのが宮沢賢治。賢治自身が、人間世界の外を四次元と呼んでいる。オペラは賢治作品の言葉を使い、賢治の思想を僕なりに組み立て直した。今回は第1幕で、第3幕まで構想している。賢治が死の世界をどう捉えたのか、オペラにしたい」

 中沢新一さんのトークイベント「四次元の学校」が28、29日の午後3時半から、石巻市のIRORI石巻で開かれる。無料。


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2017年08月27日日曜日


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