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<台風10号豪雨1年>被災の教訓 秋田豪雨で生きる

平和中に避難した愛幸園の入所者。計画に沿ってスムーズな避難を実現した=7月23日午前11時35分ごろ、大仙市(愛幸園提供)

 昨年8月の台風10号豪雨で、避難の遅れから入所者9人が亡くなった岩手県岩泉町の高齢者グループホーム「楽(ら)ん楽(ら)ん」の悲劇は、福祉の現場に重い課題を突き付けた。今年7月には、秋田県を襲った大雨で雄物川が氾濫。その時、高齢者施設では−。(盛岡総局・斎藤雄一)
 東北北部が記録的大雨に見舞われた7月22日午後10時半、大仙市の特別養護老人ホーム「愛幸園」に勤務時間外の職員3人が駆け付けた。夜勤の3人と手分けし、雨量や河川の水位に関する情報の収集が始まる。
 愛幸園は、雄物川から約500メートルという洪水浸水想定区域に立地する。夜明け前には職員38人が集まって非常食やおむつを準備。23日午前7時半、約1キロ離れた避難所の平和中に入所者81人の搬送を始めた。
 雨が峠を越えたのを確認し、午後6時には全入所者が施設に戻った。体調を崩した入所者はいなかった。
 愛幸園は台風10号豪雨を受けて昨年10月、水害想定の避難計画を策定した。翌11月には入所者をベッドや車いすで搬送する避難訓練も実施。今年6月には近隣住民や市職員と防災学習会を開き、連携を確認していた。
 施設長の山谷勝志さん(63)は「楽ん楽んの悲劇から、災害時の人員配置や協力体制を整えておかなければならないと痛感した。避難所への移動は計画通りできた」と振り返る。
 台風10号豪雨を教訓に策定した計画に基づき円滑に避難を進めた一方、肝心の情報収集や行政との連携には課題が残った。
 愛幸園周辺に「避難指示」が出たのは23日午前4時20分。「避難準備・高齢者等避難開始」「避難勧告」と段階を経ず、一足飛びの発令だった。
 準備を整えていたにもかかわらず、実際の避難開始は指示発令の3時間後と出遅れた。付近を巡回していた市広報車の音声も聞こえなかった。
 「市の避難情報は福祉施設へ電話で直接知らせてほしい。今回の反省を生かして情報収集に関する計画を見直し、行政との連携を密にしたい」と気を引き締める山谷さん。現場の試行錯誤が続く。


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2017年08月30日水曜日


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