広域のニュース

<アスベスト>津波発生時の飛散対策を追加 マニュアル改訂へ

アスベストを含むがれきを撤去する宮城県職員ら=2011年12月、宮城県石巻市

 多くの建材に含まれる発がん性物質アスベスト(石綿)を巡り、環境省は近く、自治体向けに作った「災害時飛散防止マニュアル」を改訂する。東日本大震災を受け、想定していなかった津波発生時の対応策を追加。全体で内容を約4割増やす。マニュアルに関しては認知度が低いとの指摘があり、周知が課題になりそうだ。

 地震で壊れた建築物からの石綿飛散は、1995年の阪神大震災で危険性が指摘された。石綿関連疾患の潜伏期間は20〜50年。2008年以降、少なくとも5人ががれき処理などが原因の中皮腫で死亡した。
 マニュアルは05年に兵庫県で石綿を扱う工場周辺住民の健康被害が発覚したことなどに伴い、07年に作成された。災害廃棄物の処理計画作成や石綿が露出した被災建物の応急措置法を盛り込んだ。
 初の改定作業には宮城、熊本両県職員も参加し、被災経験を生かした。具体的には津波発生時の対応に関する章を新設し、流された石綿含有建材の回収や分別の注意点を紹介。石綿露出の建物は所有者に飛散防止の責任があるが、所有者不明の場合は自治体が措置する方針を示す。
 災害に備え石綿を使った建物を把握する対策も追加した。環境省の担当者は「先行事例をまとめ、図や写真も多く入れた。ぜひ参考にしてほしい」と話す。
 マニュアルについては総務省が16年の行政評価で「周知が十分でなく危機意識の欠如が懸念される」と環境省に勧告。39県市への調査で、マニュアルに沿って準備しているのは6県市にとどまった。
 震災後、沿岸自治体の石綿対策を支援した「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」(東京)の永倉冬史事務局長は「改訂版は網羅的だが、石綿関連の業務経験がない職員が災害時に使いこなせるかは疑問。飛散防止は日常の備えが重要。国は通知にとどめず、実効性ある取り組みを進めるべきだ」と強調する。

[アスベスト(石綿)]高度経済成長期に利用が増え、建材など約3000種類に約1000万トンが使われた。使用は段階的に規制され、2012年に完全禁止となった。中皮腫の死亡者は15年に1500人を超え、10年間で約1.5倍に増加。国は石綿を使った建物が全国に約280万棟あり、28年前後に老朽化に伴う解体のピークを迎えると予測する。


関連ページ: 広域 社会

2017年09月03日日曜日


先頭に戻る