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食を通じて相互に利益「被災地版CSA」販路回復のカギ握る

会員に配ったイチゴやニンジンなど10種
地域のスーパーで25ドルで買えた有機野菜は6種

 生産者が消費者に直接販売する米国のCSA(地域支援型農業)には、ウインウイン(相互利益)の仕組みが数多くある。日米教育委員会の2016年度フルブライト奨学生として10カ月にわたり現地で調査、取材し、東日本大震災で被災した1次産業の販路回復に応用できると感じた。ボランティアら都市住民とつながった縁を、食を通じた息の長い関係に発展させる「被災地版CSA」を提案したい。(報道部 門田一徳)

◎ニュース深掘り/CSA(地域支援型農業)被災地こそ始めよう

 最大の特徴は経済的な相互メリットと言える。ニューヨーク州イサカ地域のフルプレート農場集団は、会員の消費者に配る有機野菜の価格をスーパーの2割安を目安にしている。箱詰め会員の1週間当たりの価格は約25ドル(2750円)だ。
 例えば17年6月中旬、会員に配ったのはイチゴやニンジンなど10種だった(写真上)。同じ有機野菜を地域のスーパーで、25ドルで買えたのは6種(写真下)。10種そろえるには37ドル(4070円)必要だった。
 会員はこの週、スーパーより3割安く野菜を買えたことになる。生産者にとっても、利益率は卸販売より断然高い。
 食材の収穫や受け渡しを手伝い、労働の対価として野菜を受け取るワークシェア会員も人気だった。生産者には人件費を抑える効果がある。
 相互メリットは生産者と消費者にとどまらない。食材の受け渡しを無料で代行するレストランや小売店も数多くあり、会員が受け取りに来なかった場合、残った食材を店側がもらえる仕組みになっていた。
 東北の被災地で1次産業は販路回復の苦戦が続く。その典型が水産業。宮城県では水揚げ量が震災前の8割弱まで戻る一方、水産加工業者の売り上げは5割にとどまる。仲買人や小売店を挟む販路だけでなく、持続的な直接販売ルートがあれば収入は安定する。
 ボランティアや復興イベントなどで築いた都市住民とのつながりは被災地の大きな財産だ。この関係を食べ物を作る人、食べる人ともに利益があるCSAに発展させたい。
 試みは既に始まっている。東北食べる通信を発行する花巻市のNPO法人東北開墾はコメ、有機野菜、短角牛、カキなどを手掛ける7生産者のCSAをホームページで紹介。事務局は「会員との交流が多いほど人気が高い」と説明する。
 仙台市内の5生産者による秋保ゆうきの会は、あいコープみやぎ(仙台市)を通じて箱詰め有機野菜の販売を6月に始めた。予想を上回る人気で、限定60箱が4日で売れた。農場での消費者との交流も検討する。
 イサカ地域のウエストヘブン農場は、CSAを運営して25年になる地域の最古参。きっかけは地域の人々からの熱烈なリクエストだった。経営者のジョン・ボケアスミスさん(47)は「消費者との密接な関係が食の生産現場を守る」と被災地にエールを送る。
 消費者から生産者に取り組みを働き掛けることも重要だ。息の長い直接販売が被災地の生産者を強くする。

<CSA>Community Supported Agricultureの略。生産者が新鮮で安全な食材を会員の消費者に直接販売し、安定収入を得る取引手法。1986年に米国で始まった。小売店や流通業者を通さないため、消費者は食材を割安で購入でき、生産者は利益率が高くなる。米農務省によると、約7400農場が実践。年間売上額は計約2億2600万ドル(約249億円)。


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2017年09月04日月曜日


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