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<福島・鳥獣対策最前線>焼却少数 埋設でしのぐ

スライド式の台に載せられ、専用焼却炉に投入されるイノシシの死骸。ビニールでくるんで冷凍保存されていた=相馬市

 東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示が解除された福島県内の地域で、イノシシなどの野生鳥獣が暮らし再生の妨げになっている。避難中に動物のねぐらと化した生活圏をいかに元に戻していくか。駆除と処分、前例のない侵入防止策に挑む最前線を歩いた。(福島第1原発事故取材班)

◎原発被災地の行方(中)処理

<専用の炉>
 バーナーから噴き出す炎がイノシシを包み込む。剛毛に覆われた体があっという間に焼け焦げる。1時間ほどで炉内には骨しか見えなくなった。
 相馬市などが市内に整備したイノシシの専用焼却炉。一度に120キロ投入できる。東京電力福島第1原発事故の影響で出荷規制が続き、駆除した肉は市場に流通させられない。滞留する死骸の処理を担うため、昨年春に稼働した。
 敷地内には巨大な一般ごみの焼却プラントがそびえる。処理能力は桁違いの日量40トン以上。炉内の温度は施設の大小で大差はない。それでも専用炉の存在意義は大きいという。
 「一般炉は窯全体を温めてごみ自体の燃焼を促す仕組み。大型動物の死骸はよほど細かく解体しなければ焼き尽くせない」。運営に当たる相馬方部衛生組合の職員が説明する。

<強い不満>
 体重が100キロを超えることもあるイノシシの解体は大きな労力と手間が要る。解体作業ができない駆除隊もある。専用炉があるのは福島県内では相馬に限られ、複数の自治体が埋設でしのいでいる。
 南相馬市は原町、小高両区のそれぞれ1カ所に埋設している。あくまで「一時的な対応」とするが、最終処理のめどが立っているわけではない。
 市は放射性物質をモニタリングするなど安全確保に努めている。今のところ汚染は確認されていないが、住民の不満は強い。
 山林に用地を確保した小高区と異なり、原町区は周辺に宅地が広がる。生活者にとって2500頭もの土中の死骸は迷惑物でしかない。地元の西山良雄区長(75)は「将来どうなるかは誰も分からない。確実に撤去してほしい」と訴える。
 大熊町も埋設している自治体の一つ。町の大部分は帰還困難区域で、国の指導によって高濃度に汚染された死骸は域外に持ち出せない。上下水道も復旧しておらず、現地での解体も現実的ではない。
 担当者は「処分施設の建設を国に要望している。『出口』が決まれば駆除計画も立てやすくなるのだが…」と打ち明ける。

<新たな策>
 どの埋設場所もいずれは死骸で満杯になる。別の地点を選定しても住民合意が得られる保証はない。対応に苦慮する福島県内の被災地では、新たな方策を模索する動きも出ている。
 原発周辺に位置する双葉郡8町村でつくる双葉地方広域市町村圏組合は、微生物を使う処理を年内にも始める。死骸を特別な微生物とおがくずなどとまぜて減容化する手法だ。まずは富岡町に実証設備を新設し、技術の有効性を確かめる。
 焼却が不要になる程度に分解することを目指す。自治体関係者の一人は「最終処分の幅が広がれば処理が円滑に進む」と実証の行方に期待を寄せる。


2017年09月03日日曜日


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