宮城のニュース

<リボーンアート>窓から見る海作品に 移住から5年思い託す

作品の窓から海を見詰める増田さん

 宮城県石巻市を中心に開催されている総合祭「リボーンアート・フェスティバル(RAF)2017」に、美術家の増田拓史さん(34)が同市在住で唯一の招聘(しょうへい)作家として参加している。牡鹿半島の先端にあるホテルの2部屋を借り、東日本大震災をテーマに目の前の海を作品として切り取った。

 一部屋目の作品は「みれなかったものがみえたとき」。室内は壁や床が真っ白に塗られ、椅子がある。腰掛けて正面の窓を見ると、離島の金華山と牡鹿半島との海峡が眺められる。
 窓には、電圧が変化することで透明から不透明になる特殊なフィルムが貼られている。一定時間で移り変わるため、はっきり見えていた景色も窓が曇ったように徐々に見えなくなる。
 もう一部屋は「部屋の中に置かれた海」。真っ暗闇の中にかすかに明るい水槽を配置した。外に向けられたレンズから海の映像をリアルタイムで投影する。景色が見えるかどうかは天候に左右される。
 横浜市を拠点に活動していた増田さんは震災後の11年12月、石巻に移住。被災地で暮らしつつ、日常的に住民の声を聞いてきた。
 「海の見える高台に住宅を再建したものの、やっぱり海を見たくないという女性がいた。一方で、震災前と変わらず海に仕事の糧を求める漁師もいる」
 震災から6年余り。海と距離を置きたい人ともう一度近づきたい人。地域の声は二極化している。「被災地を舞台にした芸術祭なら、在住作家として震災を表現しなければと思った」
 白い部屋では、見た人それぞれが心地よい海との距離感を探る。黒い部屋では自然の理不尽さなど、震災の記憶を思い返す。作品に施した仕掛けに、そんな意図を込めている。
 増田さんが震災をテーマに作品を手掛けたのは2度目だ。前回は12年。市中心部の旧北上川河口部が舞台だった。震災後、堤防整備などで変わっていく風景を残そうと、ビデオカメラで映像を撮影した。
 「住民になり、安易に震災に触れられなかったが、時間をかけて被災地と向き合ったことで、納得できる作品ができた」
 被災地に根を下ろした美術家が、地域とたどった5年の歳月を作品に託した。


関連ページ: 宮城 社会

2017年09月06日水曜日


先頭に戻る