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<原発と宮城知事>課題山積 指導力望む声

高齢化が進む宮城県女川町小屋取地区から原発を臨む。阿部さんは「事故があってもなくても、そのうち誰もいなくなるさ」と語る
女川原発の事故を想定した避難計画をどう思うか

 10月5日告示の宮城県知事選(22日投開票)まで1カ月を切った。次期知事は任期中、東北電力が2018年度後半以降に目指す女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働を巡り、重大な判断を迫られる公算が大きい。4選を目指す村井嘉浩知事の姿勢や全国の原発立地自治体の動向から、トップが担う責任と関与の在り方を問う。

◎2017宮城知事選(下)避難計画

<逃げ場はあるか>
 未曽有の事故の教訓は生かされたのか。
 宮城県牡鹿半島東部、女川町小屋取地区。東日本大震災の津波被害から復旧した港越しに、東北電力女川原発が見える。「逃げるったってなあ」と、行政区長を務める阿部仙一さん(63)。20年間、東北電の子会社で女川原発に勤めた。「何もないと信じてるけど」と苦笑する。
 2015年10月、県原子力防災訓練に参加した。バスで登米市まで1時間20分。本来の避難先の栗原市はさらに20キロ先だ。実際は渋滞で何時間かかるか。高齢者ばかり約40人が避難する難しさを思う。「逃げる間に放射能浴びてはなあ…」
 女川原発30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)に含まれる7市町の避難計画が3月、女川町の公表で出そろった。計20万人以上が県内31市町村に避難する規模は、東京電力福島第1原発事故時のUPZ人口を2.5倍超上回る。

<「最後のとりで」>
 備えは万全か。県が13年度に公表した推計では、住民の90%が30キロ圏外に出るまでに15時間50分。福島の事故を例に、放射性物質の拡散前には避難が完了するとの主張だ。
 ただ、推計の想定は自家用車利用のみ。現実には要援護者や離島住民がバス、船舶などで避難を迫られる。前提とする5キロ圏の予防的防護措置区域(PAZ)とUPZの段階的避難の実効性を含め、課題は山積する。
 新潟県や福井県などは市町村の計画策定に積極的に関与する。避難先は風向きなどに応じて柔軟に選べるよう複数の自治体をマッチングした。宮城県は山形県に複合災害時などの受け入れを打診するが、協議は進んでいない。美里町は山形県最上地方と単独で協定を結んだ。相沢清一町長は「県の支援はなかった」と話す。
 避難計画は住民を守る「最後のとりで」だ。県は内閣府がつくる原子力防災協議会作業部会の議論を経て全体の計画をまとめるが、立地2市町と構成する女川2号機の有識者検討会で議論する予定はない。実効性の検証が宙に浮く。

<レールをたどる>
 「原子力政策は国の責任」と強調する村井嘉浩知事の下、県の姿勢は国が再稼働に向けて敷いたレールを忠実にたどるように見える。福島の事故を踏まえ、隣県のトップとして使命を果たしているのか。
 「県は国や東北電力の主張をうのみにするだけでは済まされない」と県内の首長経験者。ある現職県議は「県の対応は腰が引けている。県民を守るのは誰なのか」と不満を漏らす。
 宮城県内を対象にした女川原発に関する河北新報社の世論調査では、原発の安全性に87.0%が不安を表明。58.8%が避難計画の不備を指摘した。
 女川町議会の木村公雄議長は、原発事故が県民の心に落とした影を推し量るように言葉を選ぶ。
 「女川のような小さな町に判断を求めること自体、酷だ。国はもちろん、県は組織を総動員してリーダーシップを発揮してほしい」
(報道部・村上浩康)


2017年09月08日金曜日


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