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短命県青森から「寿命革命」弘前大の健康ビッグデータに企業熱視線

唾液検査などを受ける住民ら=6月、弘前市の岩木中央公民館

 国内の各大手企業が、弘前大が実施する住民合同健診のデータに熱視線を注いでいる。膨大な健康情報を利活用したい企業側と、多角的な分析と研究を進めたい大学側の思惑が一致。健康法や病気予防サービスの開発を進め、短命県ワーストの青森の地から「寿命革命」を目指す。(青森総局・横川琴実)

 口腔(こうくう)ヘルスケアのライオンは、2014年に弘前大の研究に参画した。口中の細菌数や潜血を調べる唾液検査システムを使い、歯周病と生活習慣病の関連解明が目標。
 担当者は「弘前大の健康ビッグデータは宝の山。医科と歯科を同時に検査する健診は他にない。口腔状況と病気との関連が分かれば口腔ケアの重要性が高まるはずだ」と語る。嗅覚と神経変性疾患との関連を調査する製薬会社エーザイも同様に「この種の研究事例は国内にない」と意義を強調する。
 内臓脂肪の蓄積原因を探りたい花王は、地元企業と連携し「ヘルシー弁当プログラム」を始めた。
 約3カ月間試食した従業員の約8割に、内臓脂肪低減と血圧低下が確認できたという。担当者は「ビッグデータの解析を進め、個々の特長に合う商品を開発できれば新しい市場が生まれる」と期待する。
 弘前大のデータ蓄積開始は05年。県内でも特に短命傾向の弘前市岩木地区(旧岩木町)を舞台に、短命県返上のモデルを作る「健康増進プロジェクト」をスタートさせた。
 年1回の健診は約10日間にわたる。(1)ゲノム(2)体力や口腔衛生など生理・生化学データ(3)生活習慣(4)社会環境−を包括的に調査。1人を健診するのに最長7時間かかるが、1日当たり100人の協力が得られ、蓄積データは20〜90代の延べ2万人分に上った。
 こうした弘前大の取り組みは13年、文科省の革新的イノベーション創出プログラム(COI)の指定を受けた。COI指定を機に全国の約40企業も参画し、健診項目は600から約2000に増えた。18年ごろまでにビッグデータ解析を終え、20年以降はアンチエイジング商品の市場投入や新たな検査サービスを展開したい考え。
 弘前大大学院医学研究科の中路重之特任教授は「平均寿命が全国の都道府県で最下位の青森県は課題が最も現れている場所。病気の原因を明確にして予兆の発見手法や予防法を生み出し、寿命の延伸に寄与したい」と手応えと意気込みを語る。

[革新的イノベーション創出プログラム]産学連携で行う革新的な研究開発を文科省などが支援する事業。東北大や山形大など全国18大学が拠点校として指定されている。期間は2013年度から9年間。3年に1度、中間評価が行われる。弘前大は13〜15年度の期間で最高評価のS評価を受けた。


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2017年09月08日金曜日


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