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<丸森再耕 原発事故を超えて>手厚い支援 矢継ぎ早に

造形クラブで絵を描く園児たち。のびのびした保育環境が母親を安心させている=丸森たんぽぽこども園

 東京電力福島第1原発事故による放射能汚染被害を受けた宮城県丸森町。最も不安視されたのが子どもの健康への影響だ。しかし、健康調査などで隣接する福島県と「格差」が生じ、住民の不安を一層強めた。少子化に拍車を掛けた原発事故を超え、町はいま子育て支援に力を注ぐ。子どもを守る町の取り組みを見詰めた。(角田支局・会田正宣)

◎子どもを守る(下)保育充実

 花火にカブトムシ捕り。夏休みの思い出を、園児たちが部屋で色とりどりに絵に描く。ホールでは障害物リレー競走に歓声が上がる。
 丸森町役場に隣接する認定こども園「丸森たんぽぽこども園」(園児185人)は月2回、造形、運動、英語、音楽リズムの四つのクラブ活動を行っている。クラブは希望者が行うのが一般的だが、同園は4〜5歳児全員が参加する。講師もイラストレーターや仙台大教員など充実の布陣だ。
 「造形クラブを楽しみにしていて、喜んで作品を見せてくれる」。菅野恭子さん(34)は次男優翔(ゆうと)ちゃん(4)を迎えに来て、顔をほころばせた。子ども4人の菅野家は2014年夏、夫(47)が転職までして仙台市から丸森に移った。
 仙台のアパートでは、子どもの足音などがうるさくないか階下の住人に気を使った。丸森は自然が豊かで、住民との触れ合いもある。「仙台よりゆったりと子育てできる」と感じる。
 菅野さんが「子どもが多いので経済的に大変助かる」と挙げるのが、町の子育て支援制度だ。

<第2子から無料>
 町はたんぽぽこども園の開園に合わせて2013年度、第2子からの保育料無料化を始めた。県子育て支援課によると、第2子半額や第3子以降無料の自治体は多いが、第2子以降無料は珍しい。16年度は190人分、約4400万円を町が支出した。
 菅野さんは南相馬市小高区出身。実家は東京電力福島第1原発事故で避難し、同市原町区に再建した。丸森町に来た当初、実家から線量計を借りて測ったが、数値は仙台とほとんど変わらず、安心した。
 「小児科の病院が遠いのがちょっと不便だけど、周囲が皆優しい」と、丸森の生活に慣れた様子の菅野さん。「南相馬も丸森も原発事故で子どもが減り、子どもを大切にしようとする意識が強いと感じる」

<家賃補助制度も>
 町の16年度の18歳以下の人口は1817で、総人口に占める割合は12.9%。原発事故前と比べ374人減り、割合も1.0ポイント下回った。少子化がじりじりと進む厳しい現実がある。
 町は老朽化した町立保育所5カ所の再編を検討中で、町内2カ所目となる新しいこども園を19年度に舘矢間地区に開設する。保育士不足で獲得競争が激しい中、人材確保のため県内で初めて家賃補助制度も本年度に設けた。
 原発事故前の10年12月、子育て支援強化などを掲げて町長選に初当選した保科郷雄町長(67)は「原発事故で町を離れた若い移住者も少なくなかった。若者定住や子育てに特化したまちづくりは、復興の目標の一つだ」と強調する。
 少子化に原発事故が追い打ちをかけた丸森の挑戦は、消滅可能性に直面する地方の模索を象徴している。

<丸森町の子育て支援制度>子育て世帯や新婚世帯などを対象に、住宅取得やリフォーム、賃貸住宅の家賃の補助制度を設けている。若い夫婦が割安で入居できる若者定住促進住宅は、2017年度に建設中の4戸を含め計26戸を整備している。


2017年09月09日土曜日


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