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<震災6年半/風化>被災42市町村、初動対応検証は57% 記録や証言の収集困難に

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で被災した岩手、宮城、福島3県の42市町村のうち、発生時の初動対応を検証したのは24市町村(57.1%)にとどまることが河北新報社の調査で分かった。当初の混乱から得られた課題や教訓は他の自治体を含め今後の災害への備えになるが、職員の退職や人手不足で着手できない自治体が多い。11日で震災から6年半。記憶が薄れ、記録や証言の収集が困難になりつつあり、焦る自治体もある。(報道部震災取材班)

 調査はアンケート形式で実施。「震災時の初動対応で組織的な検証を行ったか」の問いに「行っている」と回答した市町村は岩手9、宮城10、福島5。「行っていない」は岩手3、宮城3、福島8の14市町村(33.3%)に上り、「現在検証中」「今後実施予定」が宮城2、福島2の4市町(9.5%)だった。
 検証した市町村の割合を県別に見ると岩手75%、宮城66.7%。原発事故の避難区域に指定され、除染や住民帰還の取り組みが続く福島は33.3%と遅れが目立つ。検証していない理由は3県14市町村中、12市町村が「職員や時間に余裕がない」を挙げ最多だった。
 「検証した」「検証中」「今後実施予定」の3県28市町村のうち、課題や教訓を避難所運営マニュアルや各種計画に「反映した」と答えたのは21市町村。「一部反映」「今後反映予定」が4市町、「未定」は1町だった。
 反映の具体例(自由記述)は「地域防災計画の改定作業に当たっての基礎資料」との回答が多かった。
 検証とは別に、被害の概要、住民、職員らの証言をまとめた「記録誌(集)」は3県の33市町村(78.6%)が発行。課題を抽出し、有事の対応を検討するまでには至っていない状況も浮き彫りにした。
 記録誌を発行したが、検証はしていない福島県川内村は「検証の必要性を感じるが、取り組めない状況にある」と強調。検証に未着手で、記録誌の発行を今後計画する岩沼市は「人事異動や当時いた職員の定年退職などで災害対応のノウハウの継続が難しい。震災復興でマンパワーが不足する中、検証までできないのが実情だ」と説明する。
 震災では余震が続く混乱の中、停電、通信手段の喪失などで情報収集や避難対応などに多くの自治体が困難を極めた。
 東北大災害科学国際研究所の丸谷浩明教授(防災社会システム)は「市町村が主体となって検証しなければ分からない教訓がある。全国の災害被災地に生かす意義も増しており、国が支援を検討していいのではないか」と指摘する。

[調査の方法]東日本大震災の津波被害を受けたり、東京電力福島第1原発事故で避難区域に指定されたりした岩手、宮城、福島3県の42市町村を対象に8月上旬、調査票を送付。「震災時の初動対応について組織的な検証を行ったか」「主な検証項目は何か」「検証で得た教訓は何か」など16項目について質問した。9月2日までに全市町村から回答を得た。

 東日本大震災の被災地は、復興へひたすら歩んできた。一方で、記憶や関心は時の経過とともに薄れ、気付かないまま風化は足元でも進む。「こんなはずじゃなかった」。「何か忘れていないか」。「風化」をキーワードに考える。


2017年09月10日日曜日


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