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<スラムに光を>安眠提供 生計の道示す

以前は路上生活をしていた男児たちが暮らす子どもの家。表情も明るくなった=サンマテオ市

 フィリピンはかつて東南アジア諸国の高度成長の波から取り残され、「アジアの病人」と称された。近年は6%台の成長率を維持し、マニラ首都圏には繁栄を象徴する超高層ビルが立ち並ぶ。一方、ビル群の谷間には発展から取り残されたスラム街があり、住民は最低限の生活を強いられている。東北の小中高教師を派遣した国際協力機構(JICA)東北支部の海外研修に同行取材し、フィリピンが抱える陰の面を伝える。(報道部・山口達也)

◎フィリピンからの報告(中)支える現場

 2013年7月、10歳にも満たない男児が1人でマニラ市中心部をさまよっていた。近くに親らしき人はいなかった。
 「どこから来たのか」「両親は」。役人が保護して尋ねても男児は何も答えられない。以前の記憶が失われたか、封印されていた。
 フィリピンで活動する認定NPO法人アイキャン(名古屋市)によると、路上生活する子どもの特徴は、完全な孤児か、家族はいても家計を支えるため学校に通わずに仕事をするケースなどに大別されるという。
 保護した男児はようやく両親の名前を話した。連絡を取ったが、反応はなかった。本当の親かどうかも分からなかった。結局、孤児となったロナウド君(10)=仮名=は国の保護施設を経て16年4月、アイキャンの長期保護施設「子どもの家」に入った。

 子どもの家は16年1月、国際協力機構(JICA)などの支援を得て、マニラ首都圏中心部から西に約20キロのリサール州サンマテオ市に整備された。今はロナウド君ら18歳未満の男子6人が暮らす。
 子どもの家では寮母が交代制で勤務して食事を提供し、学校の宿題を手伝う。寝室も用意される。差別を受け、見ず知らずの人から暴力を振るわれる路上生活では望めない安眠を得ることができる。
 子どもたちは当初、集団生活になじめなかったが、徐々に仲良しになった。学校から家に戻れば、みんなでバスケットボールを楽しむ。
 子どもの家での生活は18歳を迎えるまで。専属の社会福祉士イザベル・ランデラルさん(27)は「みんな心に傷を負っていて、少しずつ心を開いてもらっている。何とか夢を見つけて羽ばたいてほしい」と願う。

 マニラ首都圏ケソン市の国立フィリピン大キャンパスに昨年11月、アイキャンの支援を受けたカフェがオープンした。メニューはパスタとパン、コーヒーなどのドリンク。路上生活を経験し、アイキャンで調理法やマナーを学んだ17〜23歳の若者5人が運営する。
 麻薬取引などの犯罪や暴力、売春が横行する路上生活から若者を抜け出させ、生計できるようにすることが目的だ。
 スタッフの一人、エルビさん(20)も子どもの時に路上でたばこを売り、生計を立てていた。「自分と同じような境遇の子どもに新しい生活があることを示したい」と意欲を見せる。

<認定NPO法人アイキャン>1994年の設立(2001年法人化)。名古屋市に事務局を置き、途上国の貧困や災害に苦しむ子どもたちを支援している。特にフィリピンでの事業に力を入れており、日本人スタッフ4人を含む約30人で活動中。活動費用は主に企業や個人の寄付で賄っており、支援するパートナーを求めている。


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2017年09月01日金曜日


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