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<みやぎ考・復興の虚実(3)>住まい(上)薄らぐつながり 地域再生格差じわり

災害公営住宅の集会所で談笑する入居者。地域によってコミュニティー形成に差が出始めている=宮城県亘理町の上浜街道住宅

 東日本大震災の被災地に、復興の理想と現実が交錯する。発生から6年半、崩壊した風景の再建は進んだが、住まいやなりわいの足元は固まっていない。宮城県知事選(10月5日告示、22日投開票)は、復興完遂に向けた道筋が争点となる。「フッコウ」の掛け声が響く中、沿岸には被災者の苦しい息遣いとやり場のない嘆きが漂う。

◎2017宮城知事選

<孤独死を防げず>
 「3週間後に見つかるなんて。ショックでした」
 宮城県亘理町にある一戸建ての災害公営住宅で、70代の女性が声を落とした。
 数十世帯が暮らすこの住宅団地で半年前、50代の男性が孤独死した。部屋の明かりが一日中消えないのを隣の住人が不審に思って連絡し、死後20日ほどたって見つかった。
 地域住民らの話では、亡くなった男性は仕事で長く町を離れ、東日本大震災の直前に地元に戻った。「親の墓守のため」と話していたという。被災し、2014年12月ごろ災害公営住宅に入った。亡くなる直前は仕事をしていなかった。死因は判然としていない。
 災害公営住宅の住人の孤立を防ごうと、町は昨年度までマンションタイプの団地周辺にある集会所4カ所で、臨時職員が平日常駐する傾聴事業を実施。集会所は住民のサロンにもなっていたが、男性の住む団地からは歩いて10分かかった。
 「ここから利用する人はほぼいなかった。世帯数の多いマンションタイプの方が支援は手厚いように感じる」。同じ女性が振り返る。「亡くなった男性が釣った魚を持ってきてくれたことがあった。今思えば、つながりを求めていたのだろう」と悼んだ。
 傾聴事業は今年3月終了した。町の担当者は「少しずつ、住民中心の活動に移行してもらうため」と説明するが、今も集会所が毎日開くのは2カ所だけ。利用が低迷する地域もある。

<世話役で円滑に>
 内陸部の上浜街道住宅の住民は4月、交流組織「たんぽぽの会」を発足させた。平日午前に十数人が集会所で顔を合わせ、女性はお茶のみ、男性は将棋などを楽しむ。
 会を支援する地元行政区の小田紘区長(76)は「公営住宅に中心となる人物がいたことで、活動が円滑に動いている」と言う。世話役の存在の有無が地域づくりの格差に直結している。
 同様の課題は、県が災害公営住宅を含む自治会などの行事をバックアップする「地域コミュニティー再生支援事業」にも潜む。最長3年間、世帯数に応じて年最大200万円を補助。事業を活用して年5、6回のイベントを組む行政区がある一方で、ほとんど活用していない地域もある。

<伴走する人材を>
 「コミュニティー再生支援事業は見積もりや目的、スケジュールなどを書く申請手続きがあって、住民にはハードルが高い」
 こう説明するのは、宮城県山元町の被災地支援を続けている宮城大山元復興ステーション特任調査研究員の橋本大樹さん(35)。「地域再生に差が生じないよう、補助金だけでなく自治会に伴走するコーディネーターのような人材が必要だ」と指摘する。
 県内の災害公営住宅は9割が完成した。肝心のコミュニティーづくりは、模索の中で先行きを見通せずにいる。(亘理支局・安達孝太郎)


2017年09月15日金曜日


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