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<復興の虚実(4)>住まい[下]サポートの苦悩 担い手足らず空洞化

災害公営住宅に囲まれた広場で開催された盆踊り大会。新たなコミュニティーづくりのきっかけを模索する=石巻市蛇田

 東日本大震災の被災地に、復興の理想と現実が交錯する。発生から6年半、崩壊した風景の再建は進んだが、住まいやなりわいの足元は固まっていない。宮城県知事選(10月5日告示、22日投開票)は、復興完遂に向けた道筋が争点となる。「フッコウ」の掛け声が響く中、沿岸には被災者の苦しい息遣いとやり場のない嘆きが漂う。

◎2017宮城知事選

<地道に人つなぐ>
 4階ベランダから身を乗り出した高齢男性が、太鼓の音を聞いて階段を下りてきた。ベビーカーを押す若い夫婦も、屋台の匂いにつられて駆け寄ってくる。
 東日本大震災で被災した住民の入居が進む、石巻市新蛇田地区の災害公営住宅。22棟が並ぶ団地の広場で8月19日、盆踊り大会が企画された。入居者や近隣住民はやぐらを囲んで輪になり、交流を深めた。
 イベントの事務局は、市内の被災者でつくる一般社団法人「石巻じちれん」。市内に五つあった仮設住宅団地の自治会が2011年12月、「孤独死ゼロ」を合言葉に前身の連合会を結成した。サークル活動やお茶会を通じ、入居者のコミュニティー形成に携わる。
 じちれん会長の増田敬さん(66)は「部屋の電気や郵便受けなど日々の変化に気付いてあげられるのは、身近な入居者だけだから」とかみしめるように話す。
 市内の災害公営住宅で15年2月と10月、独居男性の孤独死が相次いで確認された。うち1人は増田さんの近所。「なぜ気付いてあげられなかったのか」と悔やみ、翌年に住民同士が連絡先を交換する「つながりカード」を作り、配布した。
 「互いが知り合うきっかけを一つずつ増やしたい」と話す増田さん。仮設住宅に比べ、入居者の顔が見えにくい災害公営住宅で地道な取り組みを続ける。

<資金繰りに苦慮>
 宮城県内の災害公営住宅で確認された孤独死は、今年3月末時点で計43人。14年は3人、15年は11人、16年は15人だったが、仮設からの転居が進み、17年は1〜3月だけで14人に上った。
 16年度に県が公表した災害公営住宅の健康調査で、独居高齢世帯の割合は24.6%。プレハブ仮設(21.7%)、みなし仮設(14.4%)を上回り、見守り対策の必要性が増している。
 県は15年度、自治会組織の設立を支援しようとイベント開催費などの助成事業を始めた。年間約70件の利用を見込んだが、同年度は14件、16年度は61件にとどまり、予算すら消化できていない。
 県の担当者は「入居者の高齢化で担い手が見つからず、受け皿づくりが遅れている」と弁明する。新しいコミュニティーづくりを補完する役割を担ってきたNPOやボランティア団体も資金繰りに苦慮しており、地域を支える活動は空洞化の危機が高まっている。

<「行政も関与を」>
 石巻市の公益社団法人「みらいサポート石巻」の中川政治専務理事は「復興期間が終了し、国の補助が打ち切られる20年度以降が心配。支援の枠組みを改めて話し合う必要がある」と不安を募らせる。
 真新しい住宅団地を覆う、もろくて弱い人々のつながり。東北学院大の斉藤康則准教授(社会学)は「行政が積極的に関わらなければ、問題の解決は難しい」と警鐘を鳴らす。(報道部・桐生薫子)


2017年09月17日日曜日


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