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<復興の虚実(5)>なりわい[上]苦境の水産加工業 販路減に原料高直撃

塩釜市で2月に開かれたフード見本市。水産加工業者がバイヤーに商品を売り込んだ

◎2017宮城知事選

<中小対応できず>
 水産加工業者が集積する塩釜市で今年3月、1軒の揚げかまぼこ店が廃業した。「これ以上やっても取引先に迷惑を掛けるだけ」。70代の元社長は、父親の代から営んだ店を閉めた理由を淡々と話す。
 東日本大震災で工場が浸水。被災した企業を支援する国のグループ化補助金を使い、かまぼこの製造販売を続けていた。「販路が狭まり、生き残るには販促や生産設備の大幅な見直しが必要だったが、私たちのような中小企業では対応できない」と無力感を抱える。
 塩釜蒲鉾(かまぼこ)連合商工業協同組合に加盟する業者は1970年代、80社を数えた。現在は22社。国民の食生活の変化など業界が抱える構造的な問題に、大震災が追い打ちをかけた。
 阿部善久理事長(60)は「出荷できなかった間に、スーパーなどの棚が他産地の商品に取って代わられた。6年半たっても売り上げが戻っていない」と業界の苦境を代弁する。
 宮城県はバイヤーを招いたマッチング、商談会を開催。関東、関西、海外で開かれる水産物の大型見本市にもブースを出展し、県産品をPRするが、販路回復はいまだ途上にある。

<「風評被害」続く>
 被災4県のグループ化補助金の交付先を対象に、東北経済産業局が昨年実施した調査によると「売り上げが震災前の水準まで回復していない」と回答した水産・食品加工業のうち、要因として割合が高かったのが「既存顧客の喪失」(20.2%)と「風評被害」(21.3%)だった。
 「関西からの注文は止まったまま」と塩釜市の加工業者は嘆く。別の業者は、名古屋市の展示会で「ああ三陸ね。原発事故の風評があるから、商品は扱えないよ」と直接言われ、衝撃を受けたという。
 水産物の世界的な需要の高まりを背景にした原料高も悩みの種だ。水産庁によると、東京・築地市場の今年1〜3月の卸売価格は冷凍サケ・マス類が過去5年の平年比155%、冷凍イカが183%、冷凍サバが114%と高騰している。
 水産物を奪い合う事態は200カイリ規制後、原料を輸入に頼る塩釜市の加工業者を直撃した。タラは米国、アカウオはアイスランド、ホッケは米国とロシアから輸入している業者は「経験したことのない厳しさだ」と危機感を募らせる。

<凍結施設に活路>
 今月5日、市内の水産業、水産加工業の8団体の代表が市議会を訪れ、請願書を提出した。市魚市場に水揚げされるサバなどの凍結施設整備に向け、県有地の払い下げを求めた。「地元産の加工原料を確保でき、商品開発やブランド化への期待が膨らむ」と、市魚市場卸売機関の志賀直哉社長(69)らは強調する。
 「われわれは岐路に立っている」。請願書に名を連ねた一人は悲壮感を漂わせ、そう訴えた。(塩釜支局・山野公寛)


2017年09月18日月曜日


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