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<ツール・ド・東北2017>震災の記憶次世代へ 父と娘、肩並べゴール

娘に被災地の今を見せたいと参加した阿部英之さんと瑞樹さん親子=17日午後2時45分ごろ、石巻市の石巻専修大

 被災地となった故郷の今を娘に見せたい−。17日に閉幕した「ツール・ド・東北2017」で、千葉県船橋市の阿部英之さん(52)が、長女瑞樹さん(22)と女川・雄勝フォンド(65キロ)に出場した。出身地の石巻市に単身赴任中の父。船橋で生まれ育った娘。親子は並んでペダルをこぎ、被災地への思いを分かち合った。美しく、たくましい石巻の姿を次世代につないだ。
 「娘と走れてうれしかった」「父との一生の思い出になった」
 親子は充実感にあふれた笑顔を見せ、肩を並べてゴールした。
 ゼネコン社員の阿部さんは、家族を船橋市の自宅に残し、2013年から石巻市渡波地区の実家に住む。宮城県女川町のまちづくりに携わり、高台移転などを手掛けた。
 今年のお盆、家族が石巻に来た。長雨の晴れ間を縫って、瑞樹さんと自転車の練習をした。水面(みなも)が光る万石浦を眺めながら、大学4年の娘に思いを明かした。
 「瑞樹にとって船橋は実家、故郷だ。いずれ就職し、結婚し、離れていくだろう。だけど、渡波を、石巻を忘れんなよ」
 阿部さんの実家は床上浸水したが、両親は自宅2階に上がって無事だった。妻祐子さん(51)も渡波地区出身。両親と祖母は逃げる途中に車ごと流されたが、高校生に助け出された。
 祐子さんとは小中学校の同級生。双方の両親、親戚も住む。瑞樹さんも幼い頃から何度も訪れた。
 阿部さんの出場は2回目。昨年、仕事仲間に誘われ、今年と同じコースを走った。瑞樹さんは、父に当日の写真を見せられ「私も出たい」と思った。
 津波に襲われた故郷。父は震災の記憶もつなぎたかった。「姿形が変わった街に、かつて人々の営みがあった。被災地を走り、悲惨な震災を思い出してほしい」。瑞樹さんをツール・ド・東北に誘った。
 コースでは娘が先行し、「体力差を感じた」と阿部さん。ゴール後「石巻の美しさ、復興のたくましさを見せられた」と成長した娘を見やった。瑞樹さんは「自然の豊かさ、応援してくれる人の温かさ、いい所だと改めて感じた。父のメッセージをしっかり受け止めるいい機会になった」と笑顔を見せた。


2017年09月18日月曜日


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