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津波で犠牲・元図書館職員の妻が本の案内人 司書資格取得「いつか私も」

岩手県陸前高田市立図書館で、子どもたちに絵本を読み聞かせる小田さん(右)
小田信弘さん

 特別な思いを胸に、子どもたちに絵本を読み聞かせる女性がいる。小田文香さん(44)=岩手県住田町=は東日本大震災で、陸前高田市立図書館の職員だった夫信弘さん=当時(41)=を亡くした。「いつの日か、私も図書館で働きたい」

 震災の津波で全壊し、7月に再建、開館した市立図書館で15日、「おはなし会」があった。小田さんはボランティアグループ「ささ舟」の一員として初めて参加。乳幼児らを前に大型絵本を読み聞かせた。
 移動図書館の運転手だった信弘さんは勤務中に津波にのまれた。小田さんは震災後、子どもたちを連れて住田町の実家に転居し、保育所で働き始めた。
 ある日、ささ舟のメンバーが保育所で絵本を読み聞かせてくれた。人を楽しませ、喜ばせる絵本の素晴らしさに小田さんは気付いた。「多くの子に本を通じていろいろな世界を知ってほしい。困難にも負けない生きる力を育んでほしい」
 本に関わる仕事がしたいと休職して大学に通い、図書館司書の資格を取得。ささ舟の読み聞かせボランティアに加わった。
 今年8月には長男(16)と次男(14)を伴い、学童保育の子どもたちに絵本を読み聞かせた。小田さんと次男が物語を読み、長男が絵をめくる。長男も次男もうれしそうだった。
 「僕は図書館で働く人になりたい」。震災の後、信弘さんを思い出すように次男はこんなことを言っていた。
 信弘さんは、なじみの利用者が好きそうな本を用意してあげたり、お年寄りのためにスロープを設けたり、そんな図書館職員だった。
 小田さん一家は来年、陸前高田市に戻るつもりだ。「夫の姿は見せてあげられないが、代わりに図書館で働く私の姿を子どもたちに見せたい」。小田さんはそう語る。


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2017年09月20日水曜日


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