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<横手5人死亡火災1カ月>自立促す受け皿不足

火災前のアパートの外観。精神障害者が地域で暮らす拠点になっていた(運営会社のホームページより)

 秋田県横手市南町のアパート「かねや南町ハイツ」が全焼し、5人が死亡した火災は22日、発生から1カ月を迎えた。入居者25人のうち17人に精神科の通院歴があり、アパートは退院した患者やグループホームでの共同生活を好まない人が地域で生活していく拠点だった。同様のアパートは秋田県内に少なく、焼け出された入居者の多くは行き場を失ったままだ。精神障害者が地域で暮らしていくための課題を「かねや南町ハイツ」から探った。(秋田総局・藤井かをり)

◎地域で暮らす精神障害者(上)居場所

<夢・自由与える>
 「アパートは弟に夢や自由を与えてくれる居場所だった」。精神障害があり、今回の火災で重傷のやけどを負って横手市内の病院に入院する男性(60)の兄(64)=岩手県=は語る。
 兄弟は同市出身。男性は高校卒業後に上京し、仕事のストレスなどから精神的に不安定になった。30歳ごろ地元に戻り、実家で暮らしながら精神科への入退院を繰り返した。約15年前、母親が高齢者施設に入ると、身の回りの世話をする人がいなくなった。
 兄は家族や仕事の都合で同居は難しい。「弟が自立する方法はないか」。精神科の病院に通いやすく、食事も提供してもらえる。そんな場所を探していた時に病院から紹介されたのが、かねや南町ハイツだった。
 アパートは6畳一間で、日曜と祝日を除く毎日、朝夕食が付いて家賃は月5万1840円と割安。食事の配膳や後片付け、風呂、トイレ、食堂、台所といった共用スペースの掃除などは常駐の管理人が担っていた。
 男性は生活保護を受給し、1人暮らしを始めた。週に数回、病院の送迎で生活訓練のデイケアに通う以外は趣味の読書を楽しんだ。兄は「アパートのおかげで弟の病状は安定し、穏やかな時間を過ごすことができた」と感謝する。

<ほぼ空きなし>
 アパートは、仕出し業のよこてフードサービス(横手市)が運営する。社長の佐々木安弘さん(48)は精神障害者の社会復帰施設でボランティアをした経験があり、精神障害者を積極的に受け入れてきた。
 かねや南町ハイツのような、食事付きで管理人もいるアパートはめったにない。精神障害者を支援するNPO法人秋田県心の健康福祉会(秋田市)顧問の藤原慶吾さん(79)は「精神障害者の多くは、低収入や偏見などからアパートへの入居を断られる場合が多い」と指摘する。
 精神障害者の高齢化に伴い、これまで世話をしてくれていた親や兄弟ら身寄りが次第にいなくなり、住まいに困るケースが全国的に増えている。
 県障害福祉課によると、今年3月末現在、精神疾患で県内の病院に入院中の患者は3428人。一方、県が把握する精神障害者を対象にした県内のグループホームの定員は288人で、ほぼ空きがない状態だ。
 国は施設や病院で暮らす障害者の地域生活への移行を促すが、受け皿となる施設は不足している。
 見舞いに訪れた兄は男性の回復を祈りながらも、今後のことに頭を悩ませる。次の住まいの当てがないからだ。「精神障害者が地域で安心して暮らしていける拠点や仕組みをつくってほしい」と切望する。

[横手5人死亡アパート火災]8月22日午前0時50分ごろ出火。木造2階の約470平方メートルが全焼し、2階に住んでいた山本昭太郎さん(78)、千田亮司さん(58)、佐藤忠実さん(62)、真田茂さん(61)、菅原真作さん(58)が死亡した。横手署が出火原因を調べている。


関連ページ: 秋田 社会

2017年09月22日金曜日


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