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<仙台いやすこ歩き>(66)おひさまや/オーガニック深い滋味

 ぶらぶらと歩くのにいい季節だ。ふだんは早歩きの2人も、木漏れ日を楽しみながら北目町通の並木道を行く。「この通り、ユリノキ通りとも言うんだよ」と画伯。
 いやすこが今回やって来たのは、色付き始めた並木道に静かにたたずむ「おひさまや」。仙台におけるオーガニックの草分け的なお店である。
 入り口が2つ、左はマクロビオティック料理のレストランで、右がオーガニックフードの売店。お昼時も過ぎた午後2時というのにレストランは満席なので、とりあえず売店へ。土付きニンジンをはじめ無農薬の野菜から無添加せっけんまで、オーガニック商品がずらり。そこに、主婦や子ども連れのお母さん、外国人が次々とやってくる。常連さんが多いよう。
 そんな様子を眺めているうちに、「お待たせしてごめんなさいね」と、店長である鴫原幸恵さん(63)が迎えに来てくれた。レストランはテーブル席が3卓とカウンター。真ん中のテーブル席に座り、早速注文。窓越しに並木を眺めてくつろぎ気分のところに、待ってましたの「おひさまごはん」が到着だ。
 玄米ご飯におみそ汁、煮物の小鉢、大きなプレートにはカボチャのサモサやゴーヤー炒めなど9品。「いただきます」の言葉とともに、ぱくっといただく煮物の味の優しいこと、野菜一つ一つの味も豊か。しみじみと味わいながら、思わず「滋味」という言葉が浮かんでくる。マカロニサラダも懐かしくて、「食べていると作りたくなるね」と画伯。
 ごちそうさま!の後、鴫原さんのお話を伺った。鴫原さんをオーガニックへと目覚めさせたのは、1979年のスリーマイル島の原発事故だったそう。当時、東京で保育士をしながら子育て真っ最中だった鴫原さんにとって、スリーマイル島の子どもたちが白血病におびえている事実は、対岸の火事ではなかった。口から入るものへの関心が高まり、学んでいったという。
 仙台に帰ってきて、友人と2人、自分たちでやってみようとオーガニック食品を販売する店として1981年に「おひさまや」を開店。翌年には無農薬の玄米と季節の野菜で作る食事を出すレストランをスタートさせた。20代で起業して36年。働き続けてこられたのも、この食事のおかげと語る。
 「オーガニック野菜は味が濃く、野菜本来の甘味もあるので、シンプルに料理しておいしくいただけます」と、穏やかに話す。「ここで食べて、食事を見直すきっかけにしてもらえればうれしいですね」
 コンブとシイタケで取っただし汁、手作りの糀(こうじ)みそ。シンプルな素材を大切に、それを生かすために丁寧に手を掛ける。だからこそ、体の隅々まで染みわたる味わいになるのだろう。
 小さいながら小回りの利く厨房(ちゅうぼう)は、どこかの家の台所のようで、コトコト、トントンとおいしい音を響かせる。居心地の良さに「お尻に根が生えちゃったみたいだね〜」と、2人は人参(にんじん)ケーキとコーヒーまで満喫。店内に暖かい秋のおひさまがあふれていた。

◎自然の営み生かした食物

 「オーガニック」は有機という意味で、太陽・水・土地・微生物など、自然の営みを生かした農林水産業や加工法を指す。農薬や化学肥料、遺伝子組み換え技術に頼らず、自然のままの食物連鎖を目指すというのが、オーガニックの基本的な考え方である。
 国際的な食品規格を定めるコーデックス委員会が1999年、オーガニック食品の生産・加工・表示・販売のガイドラインを採択。これに基づき日本でも有機商品の検査認証制度「有機JAS規格」が確立されている。
 「マクロビオティック」は、明治時代、石塚左玄が玄米菜食を基本に独自の陰陽論を基に提唱した食養(食事療法)論を、桜沢如一が継承・発展させた食事法。有機農産物や伝統製法で作られた食材が望ましいとされる。食べ物は陰性と陽性に分けられ、そのバランスが大事という「陰陽調和」、一つを丸ごと食べる「一物全体」、住んでいる土地の旬をいただく「身土不二」の、三大理念を柱としている。
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 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。


2017年09月25日月曜日


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