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<みやぎ考>介護受難 瀬戸際の高齢者福祉(上)進まぬ待機者解消 

満床状態の特別養護老人ホーム。介護職は不足し、入居者は受け入れ先を求めてさまよう=気仙沼市

 県内の介護現場が深刻な悪循環に陥っている。慢性的な人材不足が続く介護職、受け入れ環境が満足に整わない施設、入居先が見つからずに漂流する高齢者。ついのすみかを求め、県外の空き施設に年老いた家族を送り出すケースが少なくない。介護の若い担い手も減少し、高齢者福祉の先行きに暗雲が立ち込める。(報道部・桐生薫子)

◎ハード優先 担い手不足

<県外の施設推薦>
 「生まれ故郷で静かに最期を迎える。そんな当たり前の環境を提供できないのが悔しくてたまらない」。気仙沼市の社会福祉法人「キングス・ガーデン宮城」で、ケアプランセンター所長を務める菅原篤さん(50)は苦しい思いを吐露する。
 法人が運営する特別養護老人ホームは常に満床状態。やむにやまれず、この数年は入居を希望する要介護者の家族に県外の空き施設を勧めることが多くなった。紹介先は一関市や平泉町、弘前市にも広がる。
 菅原さんは「遠くにお年寄りを向かわせるのは心苦しいが、在宅介護ができない家族は市内の施設が空くのを待っている余裕はない」と内情を明かす。
 県内で1人暮らしの高齢者世帯は年々増加し、この5年間で2万6894世帯増えた。家族や親戚間で高齢者を支える力が落ち、施設に頼らざるを得ない状況だ。特養待機者は2016年4月時点で1万419人に達した。
 待機者数が高止まりする背景には深刻な介護職不足がある。県内の有効求人倍率は3.89倍(今年7月現在)で、全産業平均の約2.4倍。団塊世代が75歳以上になる25年度には1万4136人が不足し、充足率は全国最低の69.0%になるとの推計もある。

<ベッドあるのに>
 東日本大震災で被災した気仙沼市は特に深刻で、南三陸町を含めた圏域の待機者は533人。今年8月時点の入所申込倍率(重複応募可)は4.3倍で、県平均(2.5倍)を大きく上回る。
 市のまとめでは今年3月末現在、施設に入居する高齢者713人中141人が市外の施設に流出した。うち44人が岩手や青森など県外だった。市の担当者は「震災後、被災地支援として高齢者を受け入れてくれた施設が今も継続している」と状況を説明する。
 市内で最も歴史がある社会福祉法人「なかつうみ会」は震災後、職員が40人減った。運営する3施設はどこもフル稼働できず、特養施設「恵心寮」は短期入所サービスを10床減らした。
 施設長の吉田寛さん(59)は「ベッドが空いていても受け入れを断らざるを得ない。現場にいる人間として最もつらい」と話す。
 県は待機者解消を目指し10年度から予算を集中配分し、15年度に整備費の補助単価を引き上げた。16年度のベッド数は10年度比67.2%増の1万191床に増えたが、抜本的な改善には至っていない。
 吉田さんは「県はハコモノばかりに力を入れ、人材確保策を怠ってきた。安上がりな福祉などあり得ない」と警鐘を鳴らす。


2017年09月26日火曜日


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