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<リボーンアートは何をもたらしたのか>成果/被災地 交流の種まく

美術ファンでにぎわう御番所公園=10日

 東日本大震災で被災した宮城県石巻市の牡鹿半島などを舞台に、7月22日〜9月10日に開催されたアートと音楽、食の総合祭「リボーンアート・フェスティバル(RAF)2017」。51日間に及ぶ大規模な祭典は、復興途上の被災地に何をもたらしたのか。19年開催の次回に向け、まつりの後を検証し可能性を探る。(石巻総局・関根梢)

◎再生の胎動(1)

<一体感生まれる>
 信仰を集める離島・金華山がすぐ近くに迫る。牡鹿半島の南突端に位置する御番所公園。週末には駐車場が多くの車で埋まった。
 公園には、世界で活躍する前衛芸術家草間弥生さんの作品が展示された。石巻市の中心部から車で約1時間。交通の便が決して良くない場所ながら、美術ファンらが詰め掛けた。
 牡鹿半島は震災の津波で甚大な被害を受けた。復興の歩みは遅い。人口減が加速し、国勢調査による旧牡鹿町の人口は震災前の2010年の4321が、15年は2448。4割以上も減った。
 RAF実行委員会によると、会期中の来場者は延べ約26万人に上った。目標の延べ20万人を上回り、震災で疲弊した地域に新たな人の流れを生んだ。
 同市鮎川浜の斎藤郁子さん(77)は、住民組織「寄らいん牡鹿」の一員として休校中の荻浜小でお茶っこ会を開催。ホヤやクジラなど地元の名産を使ったお茶請けを仲間らと持ち寄り、来場者を迎えた。
 「草間さんの作品を見に京都から来た人もいた。テーブルを囲んで話をして、お客さんとの一体感が生まれて楽しかった」と斎藤さんは振り返る。
 鮎川浜地区には19年度、震災で全壊したホエールランドなどが整備される見通しだ。斎藤さんは「次回のRAFでは、たくさんの人に新しい鮎川を見てもらいたい」と期待する。
 同校で作品を展示した芸術家パルコキノシタさんは、瀬戸内国際芸術祭(香川、岡山県)への参加経験を引き合いにRAFによる地域再生の可能性を示唆する。
 香川県の離島・男木島では芸術祭を契機に移住者が増え、休校した小中学校が再開した。パルコさんは「アーティストは(地域再生の)導火線。大切なのは、実際に地域を動かす人たちの存在だ」と話す。

<「移住も大歓迎」>
 来場者だけでなく、ボランティアサポーター「こじか隊」も全国から集まった。隊員は必要な人数に足りず、市職員を動員することになったが、実行委の松村豪太事務局長は「継続して参加することで、地域に新たな知見を増やすことにつながればいい。移住も大歓迎だ」と話す。
 東京都江東区の会社員皆藤考史さん(35)は会期中に「こじか隊」として3回にわたり参加。寝食を共にした仲間たちと交流を深め、市職員からは地域の実情を聞いた。「さまざまな人とつながりができた」と充実感をかみしめる。
 人と人とが触れ合う多様な場を創出したRAF。各地でまかれた交流の種がどう芽吹き、どんな実を結ぶのか。息の長い取り組みが求められる。

[リボーンアート・フェスティバル]牡鹿半島のほか、石巻市市街などが会場となった。アート部門に39組のアーティストが参加したほか、著名なシェフらによるレストラン、音楽ライブなどを展開。実行委員会と一般社団法人APバンク(東京)が主催、宮城県や河北新報社などが共催した。


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2017年09月24日日曜日


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