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<復興を生きる>世界の舞台を夢見て

所属するサッカー部の紅白戦で主審を務める相馬さん=9月27日、名取北高

◎宮城県最年少 高校生2級審判員 相馬寿哉さん(18)=宮城県亘理町

 ピーッ。小気味よくホイッスルを鳴らし、片手を挙げてキックオフを告げる。ピッチを駆け回り、ボールを奪い合う選手たちの一つ一つの動きに目を凝らす。
 名取市の名取北高サッカー部の紅白戦。主審を務めた3年生部員の相馬寿哉さん(18)=宮城県亘理町=は日本サッカー協会公認の2級審判員でもある。
 「判定に説得力があるよう選手に近い位置を保つことを心掛けている」。落ち着いた語り口に、公正を重んじる審判員としての誇りがにじむ。
 2級は1〜4級ある審判員資格のうち2番目に高いカテゴリー。主に東北、関東など各地域のサッカー協会主催の大会で主審や副審を務めることができる。県内で登録する94人の中で最年少だ。
 今夏、仙台市などで行われた全国高校総体(南東北インターハイ)に男子準々決勝など3試合の副審や第4の審判として参加。大会史上初の高校生審判という大役を果たし「自分に務まるか不安だったが、周囲の審判員に励まされた。大舞台で堂々と判定ができて良い経験だった」と笑顔で振り返る。
 この道を選んだきっかけの一つが東日本大震災。亘理町荒浜小5年の時に被災し、沿岸部にあった自宅が津波で全壊した。所属するサッカーのスポーツ少年団でも半年ほどプレーできなかった。
 つらい日々の中、日本代表をはじめ多くの選手が訪れ、サッカー教室などを通じて励ましてくれた。「サッカーっていいスポーツだと改めて思った」
 進学した同町荒浜中にはサッカー部がなくソフトテニス部に入ったが、競技への思いは消えなかった。高校入学後、迷わず復帰。3年間のブランクの重さは分かっていた。
 「選手としては限界があっても、違う形で関わりたい」。サッカー部の新田康晴監督の了承を得て、県サッカー協会の審判アカデミーユースコースを受講。現地再建した自宅から約1時間半かけて通学し、部活動と並行して技術向上に励んだ。昨年秋、県内の高校生初の2級に昇格した。
 目指すのはプロの審判員。まずJリーグなど日本協会主催の試合を担当する1級に昇格し、その先にワールドカップ(W杯)などを担う国際審判を夢見る。不可欠な英語力を磨くため、大学での専攻は英文科を考えている。
 「世界中から目標にされるような審判員になり、震災後に助けられたサッカー界に恩返ししたい」と誓う。新田監督も「選手だけが競技に携わる全てではないことが、多くの子どもたちに伝わる契機になればいい」とエールを送る。
 被災地から世界へ。夢に挑むスタートを告げるホイッスルは鳴ったばかりだ。(原口靖志)


2017年10月01日日曜日


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