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<ニッポンで共に生きる>関心寄せ 孤立防いで

市瀬智紀(いちのせ・とものり)1965年神奈川県生まれ。慶応大大学院博士課程中退。専門は国際教育。宮城教育大国際理解教育研究センター教授を経て17年4月から現職。宮城県多文化共生社会推進審議会会長を務める。

 外国にルーツのある子どもたちが日本の社会で自立して生きていくために、周囲はどう支えたらいいのか。多国籍の子どもたちの教育支援に長年携わる宮城教育大教育キャリア研究機構国際教育領域の市瀬智紀教授(52)に聞いた。(聞き手は生活文化部・越中谷郁子)

◎外国にルーツある子の今(6完)市瀬智紀・宮教大教授に聞く

 −宮城県の現状について教えてください。
 「外国にルーツのある子どもの数は全国的に見れば多くはないが、確実に増えている。仙台市だけではなく、各地で生活している。中国や韓国をはじめ、エジプトやバングラデシュ、トルコなど、子どもの背景にある国の多様化が進んでいる」
 「中途半端な人数がネックとなり、支援体制の整備がなかなか進んでいない。指導経験のある先生がいても個人の経験で終わってしまい、ノウハウを共有する段階までいっていない」

 −日本語指導が必要な子どもが増えています。

<学習でハンディ>
 「保護者が日本語を理解していないと、例えば『布団を敷く』といった、家庭で覚えるような基本的な言葉のインプットが圧倒的に少なくなる。日常会話ができても、論理的に日本語を組み立てられず、学習でつまずいてしまう。大きなハンディになる」
 「子どもの言語能力を測るツール『DLA』が、活用されていない。日本語習得のどの段階にいるかを客観的に評価しないまま、会話ができるからなんとなく大丈夫と思われているケースが少なくない。困っている子は、実際はもっと多いのではないか」

 −効果的に支援するにはどうしたらいいですか。
 「子どもが自力で日本語を習得するのは難しい。すぐに学校に通えるようにすることが重要だ。その上で関係機関が集まり、支援内容を検討するシステムができればいい。その第一歩として、仙台観光国際協会(SenTIA)のコーディネーター派遣制度に期待したい。学校と支援者をつなぎ、定期的にその子を見守っていく有意義な制度だ」
 「子どもを孤立させてはいけない。世界に目を向ければ、疎外感が社会への不満を持つ要因になり、国家や民族の分断を招いている。言葉が不十分でも、誰かが自分を見てくれたと実感できれば、自己肯定感につながる。困難を克服して高校や大学に進学、就職した先輩の姿を見せることも励みになる」

 −今後も外国にルーツのある子どもは増えていくと予想されます。

<行政の把握必要>
 「どこに何人いて、どんな背景を持つのか、日本語能力がどの程度か。行政が責任を持ち、一人一人を把握する必要がある。学校長をはじめ担当教諭のスキルアップ、ノウハウの共有も欠かせない」
 「子どもの本質を理解し、適切な支援をするためには、言語教育だけでなく、多文化共生、社会教育、心理などの専門家の関わりも求められるだろう。何より、子どものそばにいる地域住民や学校関係者ら、社会全体にもっと関心を寄せてもらいたい」


関連ページ: 宮城 社会

2017年09月29日金曜日


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