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震災犠牲者にささげる 鎮魂の祈り込め版画1000枚製作

自宅アトリエで版木を手にする跡部さん。手前は作品の一部

 東日本大震災の犠牲者を悼む気持ちを表そうと、名取市の美術家跡部邦明さん(78)が鎮魂の版画1000枚を完成させた。甚大な被害を受けた同市や石巻市で教諭を務めた経験から、犠牲となった関係者に思いをはせ、5年以上かけて仕上げた。今後開く個展で一部を展示するつもりだ。

 版画のタイトルは「レクイエム −鎮魂の木版画−」。最大で縦約30センチ、横約45センチの版木を76個彫り、1個につき30枚、黒一色で和紙に刷った。その後に筆を使って色付けし、厚手の紙に切り貼りして1枚の版画にした。
 版木にはそれぞれ丸や四角、波形など、震災から浮かび上がる心象を彫り、彩色や貼り方も変えた。1000枚のうち、一つとして同じ作品はない。
 創作を決意したのは2011年3月11日。停電などで情報が遮断される中、津波で大勢の犠牲者が出たことを車のラジオで聞いた。「作品を通して鎮魂の祈りをささげるしかない」と、1000枚の版画制作を誓ったという。
 構想を経て3日後に版木を彫り始めた。年齢もあって目が疲れ、体にこたえる「修行のような制作」だったが、教員時代の教え子や同僚の訃報に接したこともあって創作に没頭。16年7月に1000枚の制作を達成した。その後は制作過程や震災への思いを執筆するなどしてきた。
 跡部さんは「惨事を経験した一人として、震災を後世に伝える責務があるとも考えた」と話す。書きためた原稿は年末以降に出版する。作品の一部は18年4月から仙台市青葉区の晩翠画廊で開く個展で公開することにしている。


2017年10月09日月曜日


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