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<私の復興・水産関係者衆院選に思う>苦労に報いる政治を

三陸の水産加工業の未来を見据え、新社屋の前に立つ遠藤さん

 10日公示された衆院選(22日投開票)は震災と原発事故後、5回目の国政選挙となる。復興のステージで被災者はどう政治と向き合ってきたのか。特に被害の大きかった水産関係者の思いを追った。

◎(上)水産加工会社社長 遠藤祐二郎さん(宮城県石巻市)

 水産加工工場や住宅が再建され、街の姿が復活しつつある。石巻漁港近く、東日本大震災の津波に見舞われた石巻市渡波地区。ワカメやノリを主力商品とする海産物加工会社「富士國物産」は昨年10月、被災した社屋を建て直した。
 社長の遠藤祐二郎さん(58)が6年7カ月の道のりを感慨深げに振り返る。「初めはどこから手を付けていいのかも分からなかった。石段を一段一段上るようにやっているうち、ここまで来た」
 本社は高さ約6メートルの津波に襲われた。遠藤さんは地震後に従業員を帰宅させ、妻ら3人と車で逃げようとした際、津波を目撃。慌てて本社に戻り、2階に駆け上って命拾いした。
 周辺に点在する第1、第2工場と7カ所の冷凍冷蔵施設は全て被災した。商品の大半は浸水して売り物にならず、在庫だけで被害額は数億円に上った。
 「ゼロからではなくマイナスからの出発だった」
 従業員総出で泥をかき出し、がれきを運んだ。約1メートル50センチ浸水した工場を修復し、加工を再開したのは2011年8月。4カ月後、復旧費の最大4分の3を国と県が補助するグループ化補助金の交付が決まり、数千万円かけて冷蔵庫と倉庫、機械類を整備した。

 だが、「石巻の魚町」に打撃を与えたのは津波だけではなかった。
 5カ月間の休業が響き、販売先との取引が相次いで途絶えた。さらに東京電力福島第1原発事故による風評被害が加わった。
 「何十年の付き合いがあった取引先が離れた。風評被害も怖い。汚染された『ようだ』という話が『だった』と断定的になり、取引を断られた」
 12年12月の衆院選で、自民党が民主党(当時)から政権を奪還。震災後初の選挙で復興が話題となったが、販路喪失、風評被害による窮地を政治は助けてくれない。
 遠藤さんは販路回復を目指し、東京や大阪の商談会に足しげく通った。大きさがふぞろいのワカメを「理由(わけ)あり商品」として安価で売り、新商品を開発した。
 「当初は見向きもしなかったバイヤーが、次第に対応するようになった」

 売り上げは震災前の半分強まで回復し、復興の兆しが見えつつある。だが、14年12月の衆院選で「1強」を盤石にした安倍政権のアベノミクスの恩恵は感じない。
 今は原料が高騰し、経営環境を厳しくする。サンマに限らず、同社が扱うワカメやノリも不漁だ。
 「三陸への支援はもっとあってもいい」。遠藤さんは、ひたむきに働く生産現場が報われる対策に期待する。(石巻総局・鈴木拓也)


2017年10月11日水曜日


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