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<仙台圏私のベスト本>(9)「モオツァルト・無常という事」日本文化の魅力再発見

吉田武さん

 読書の秋真っ盛り。仙台圏の方々にイチ推し本への愛を語ってもらった。

◎飲食店経営 吉田武さん(62)=仙台市青葉区

 1986年から仙台市青葉区国分町でバー「Mr.BASSMAN(ミスターベースマン)」を経営しています。客がいない時はカウンターで本を読んで過ごしています。
 法律家かジャーナリストになりたいと思っていた学生時代、何げなく手に取った評論集「モオツァルト・無常という事」(小林秀雄著、新潮社)が私の特別な一冊です。
 著者が太平洋戦争中に書いた連作「徒然草」「無常という事」「西行」など6編では、日本中世の能や和歌、随筆などと作者の内面を取り上げて評論しています。
 中世の作品は国語の教科書に取り上げられるなど有名なものばかり。著者は作品の生まれた歴史的背景や、作者の置かれた孤独な状況を紹介して論じることで、新しい気付きや魅力を教えてくれます。
 一つの和歌、一つの詩に込められた作者の思いの深さに触れ、頭を殴りつけられたような衝撃を受けました。作品は日本の文化や歴史の中で生まれたものであり、心にすんなりと溶け込んできました。現代を生きる私たちも歴史や文化の一部だと実感しました。
 西洋哲学を学び、異なる風土や文化に基づく考え方に違和感を覚えていた私に、生まれ育った文化を重視することを示してくれた一冊です。今はバーを通じて好きな音楽や本を紹介し、仙台の文化発展に貢献したいと考えています。
 内容は難しいですが、若い人たちに読んでもらい、日本文化の魅力を再発見するきっかけにしてほしいです。(佐藤駿伍)

[メモ]批評家小林秀雄(1902〜83年)が42年から55年の間に執筆し、文芸誌や芸術誌に掲載された16編をまとめた評論集。音楽、日本中世の詩や随筆、絵画などさまざまなジャンルの作品や作家を評論している。


関連ページ: 宮城 文化・暮らし

2017年10月13日金曜日


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