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<衆院選 選択軸は何か>(1)安全保障 圧力の先の戦略必要

 じんぼ・けん 慶大大学院博士課程修了。シンガポール・南洋工科大客員研究員、台湾・国立政治大客員准教授などを経て現職。専門は安全保障学、国際政治学。群馬県出身。43歳。

 衆院選(22日投開票)は中盤戦に入った。政権選択が最大の焦点となる中、有権者は国の将来に直結する重要政策を巡る論戦も注視する。「安全保障」「復興」「原発」「社会保障」の四つの選択軸について識者に聞いた。(4回続き)

◎慶応大准教授 神保謙氏

<解散に違和感>
 北朝鮮情勢は深刻化している。北朝鮮が日本に核攻撃できることを前提に、安保戦略を練り直さなければならないという意味では新しい次元に入ったと言える。中長期的には軍事大国化する中国も含めたパワーバランスの中、どう安保政策を再構成するかを議論すべきだ。ただ、だからと言って解散総選挙には違和感を覚える。安倍晋三首相は勝てるタイミングを第一に考えたのだろう。
 トランプ米大統領は「全ての選択肢はテーブルの上にある」と言い、軍事オプションも含まれる。安倍政権が米国との同盟関係を堅持する立場を示したのはプラスだが、本当に全てのオプションを歓迎してはいないと思う。米国が武力を行使して日本や韓国に北朝鮮の攻撃が及ぶことは、もちろん回避したいだろう。
北の能力高い
 北朝鮮の韓国、日本への攻撃能力は高い。米国が軍事行動に出るのは極めて難しい。だが、日韓に被害が及ばず、北朝鮮を24時間以内に無力化できると判断した場合、限定的に軍事力を行使する可能性は残る。
 日本は米国の諜報(ちょうほう)力を信用しきっていないか。仮に北朝鮮を攻撃したが、無力化できなかった場合には日本で多数の死者が出る懸念がある、と米国に対し声を上げなければいけない。
 安倍首相は「必要なのは対話ではなく圧力だ」と主張している。北朝鮮は現在、対話をする意思がないので圧力をかけるべきだという主張は理解できる。問題は、首相がその先の明確な戦略を確立していないことだ。どんな圧力をかけるべきか、圧力だけでいいのか、という議論が足りない。長期的な封じ込めとともに、どんな出口を北朝鮮に示すのか具体的な構想が論じられるべきだ。

<具体策提示を>
 米本土ミサイル防衛が強化され、日本でも地上配備型の迎撃システム「イージス・アショア」の導入が計画されるなど、日米韓のミサイル防衛網は着々と強化されている。北朝鮮が体制維持のために、独自の核抑止力を確立するのは難しい。こうした認識を持たせるためにも、ミサイル防衛網の強化は重要だ。
 安全保障関連法が成立した時点で、憲法と安保の関わりの議論は一巡しており、選挙戦の最大争点ではない。むしろ、具体的に北朝鮮や中国にどう向き合うかを真剣に考える場にしたい。与野党それぞれが、具体的な戦略プランを提示してほしい。
 安倍政権は外交・安保で実績を残したと言えるが、問題は少なくない。ロシアとの関係緊密化を進めるが、その戦略性について国内で理解は進んでいない。中国が進める経済圏構想「一帯一路」に対しても対応方針は定まっていない。こうした論点が浮上してこないのは残念だ。(聞き手は東京支社・小木曽崇)


2017年10月13日金曜日


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