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<衆院選 選択軸は何か>(2)震災復興 「現場の反省」生かせ

やました・ゆうすけ 九州大大学院文学研究科博士課程中退。弘前大准教授を経て2011年から現職。専攻は社会学。著書に「東北発の震災論」「『復興』が奪う地域の未来」など。富山市生まれ。48歳。

 衆院選(22日投開票)は中盤戦に入った。政権選択が最大の焦点となる中、有権者は国の将来に直結する重要政策を巡る論戦も注視する。「安全保障」「復興」「原発」「社会保障」の四つの選択軸について識者に聞いた。(4回続き)

◎首都大学東京准教授 山下祐介氏

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から6年7カ月がたった。津波被災地の復旧でさえこれほど時間がかかり、ある種の諦めも漂う。被災地以外では争点になり得ない段階に入ってしまった。

<国難伝わらず>
 3・11当時の菅政権は巨大な防潮堤、むちゃな高台移転をできるだけ控え、減災を中心にして住民の声を聞く姿勢があった。原発事故対応も、被ばくさせまいと避難を一生懸命やった。
 ところが、次の野田政権は手のひらを返したように帰還政策を始めた。自民党が政権を奪還するまでには「まずは防潮堤」という方針に転換してしまった。
 首相官邸の政治家が直面した「国難」の実体験が、復興を担う安倍政権に伝わっていない。原子力政策は失敗すれば、国民の命や地域、国家さえ失う。その責任感があるのか。復興が被災者よりも公共事業優先の狭い視野で考えられている。

<税金の私物化>
 何十兆円も投じられたが、地元に落ちていない。復興事業を通じ、国の税金が誰かに私物化される回路ができてしまった。被災自治体への出向人事を絡め、用意周到に中央集権化も進んだ。
 被災地は復興ビジネスの草刈り場。事業の成就は関係なくなっている。細い柱で太陽光発電パネルを支えるメガソーラーが20年も持つのか。その後の地方創生は復興で学んだ経験に味を占め、国が地方を都合よく使う道具になりつつある。
 今春、福島県による自主避難者への住宅無償提供が打ち切られた。避難者切り捨ての序曲だ。避難指示解除が進むと、強制避難者でも避難を続けたければ生活保護など福祉の対象に身を落とすしかなくなる。だが、原発事故の避難者も津波被災者も「復興被害者」だ。結局、国の責任という問題に行き着く。

<熟議で再出発>
 国にも自治体にも「これでは駄目だ」と思う職員はいるのに、「これしかない」形でゆがんだ復興が押し付けられる。やらざるを得ない不気味さがある。この復興政策は既に失敗だ。現場の反省が軌道修正に結び付く仕組みが不可欠だ。
 間違った政策に対する異論が排除され、修正が難しくなっている。その構造は突き詰めれば、1人の政策しか選べない衆院小選挙区制度に由来する。選挙が国家としての意思決定を制約し、偏った結論を導き出す装置に化けてしまった。
 多様な価値観や考え方を踏まえ、異論をのみ込み、現時点の最適解を探す「熟議」の手法が国会に必要だ。あれか、これかの選択ではない「第三の道」だ。
 原発事故では「長期待避・将来帰還」を認める施策や避難元と避難先の「二重住民票」の導入、津波被災地では減災対策の充実、災害危険区域の再設定が検討に値する。政策形成システムを再構築し、被災地の現状を原点から振り返り、今からでもリスタートするしかない。(聞き手は東京支社・瀬川元章)


2017年10月14日土曜日


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