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<衆院選 選択軸は何か>(3)原発政策 将来の工程表 不可欠

橘川武郎(きっかわ たけお)東大大学院博士課程単位取得退学。東大教授、一橋大大学院教授を経て現職。専門はエネルギー産業論。和歌山県出身。66歳。

 衆院選(22日投開票)は中盤戦に入った。政権選択が最大の焦点となる中、有権者は国の将来に直結する重要政策を巡る論戦も注視する。「安全保障」「復興」「原発」「社会保障」の四つの選択軸について識者に聞いた。

◎東京理科大大学院教授 橘川武郎氏

 東京電力福島第1原発事故から6年半余りが経過した。この間、小売り全面自由化など電力システム改革は大きく進展したが、肝心の原子力政策の改革は停滞したままだ。2012年までの民主党政権も現在の自民、公明両党の連立政権も残念ながら大きな問題を先送りしてきた。

<公約守られず>
 政府は14年に閣議決定した「エネルギー基本計画」の冒頭で「原発依存度を可能な限り低減する」と明記した。与党も国政選挙の公約としてきたが、守られているとは言い難い。
 大きな理由の一つは、翌15年に原発や火力、再生可能エネルギーなどの2030年の電源構成の見通しとして、原発の比率を20〜22%と決めたことだ。
 新設は想定しておらず、達成するには既存の多くの原発で福島事故後に「原則40年で廃炉」と定めた運転期限を延長しなければならない。「可能な限り低減」という公約と合致しない。

<エネ情勢変化>
 政府は今年8月にエネルギー基本計画の見直し議論に入ったが、すでに「骨格を変える段階にない」との方針を示した点も疑問だ。
 現状の電源構成の目標は再生可能エネルギーの導入水準が低すぎる。15年には温室化防止の国際枠組み「パリ協定」が採択され、日本は50年までに80%の温室効果ガス削減を決めた。さらに火力の燃料となる液化天然ガス(LNG)の価格も低下傾向にある。原発政策もこうしたエネルギー情勢の変化を踏まえながら再検討すべきだ。
 衆院選では自民党が原発の活用を掲げる一方、多くの野党が「原発ゼロ」を訴えており、争点の一つのようにも見える。ただ、いずれの政党も将来の工程表を示しておらず、責任ある公約にはなっていない。
 原発をやめるにしても、利用し続けるにしても工程表は不可欠だ。策定の際には少なくとも三つの要素を盛り込む必要がある。

<コスト示して>
 一つ目は原油価格が高いケース、安いケースに分けて電気料金のコストを示すこと。二つ目は、原発の使用済み核燃料の再処理から最終処分を含めたバックエンド対策。三つ目は原発立地地域の将来の廃炉ビジネスや火力発電所への建て替えなど「出口戦略」だ。
 既存の原発はいずれ廃炉になるので、バックエンドや立地地域の将来像の議論は避けられない。原発ゼロを選択せず、わずかでも利用し続けるならば、危険性を最小化するため古い原発の建て替えを議論するのが筋だろう。
 国の原子力・エネルギー政策は20〜50年先を見据えなければならない。政党や候補者が単なるスローガンや目先の話だけでなく、何らかの将来の見通しを語っているかどうかが、選択の基準になるのではないか。(聞き手は東京支社・小沢邦嘉)


2017年10月15日日曜日


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