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<衆院選東北>国難(1)子育て/保育士不足 対策後回し

昼食を取る子どもたち。保育を担う人材の確保は待ったなしの課題だ=11日、石巻市伊勢町の石巻ひがし保育園

 北朝鮮情勢を「国難」と呼ぶ解散劇を経て、折り返しを過ぎた衆院選で各党の論戦が続く。国難は何も外患に限らない。現実と隔たる政策や置き去りにされた課題に直面する東北の現場で、翻弄(ほんろう)される人々を見詰めた。

<政策とずれ>
 「復興や未来を担う子どもたちを健やかに育てたいのに、どうして現状と懸け離れた政策ばかりなのか」
 石巻市で保育園を運営する社会福祉法人輝宝福祉会の理事長小野崎秀通さん(69)は嘆く。保育士が足りず、現場は逼迫(ひっぱく)する。衆院選(22日投開票)では多くの政党が教育無償化を公約に掲げるが、人材確保の議論はかすむ。「無償化でなく、待遇の底上げこそ待ったなしだ」
 東日本大震災で石巻市は大きな被害を受けた。市内の公立保育所が被災する中、「安心できる子育て環境を」と一念発起した。
 2014年、市東部の渡波地区に「石巻ひがし保育園」を開設。最大91人を受け入れたが、保育士の退職などで今は70人程度がやっと。郊外の蛇田地区に昨年新設した「石巻たから保育園」も、当初の定員を15人減らさざるを得なかった。
 市は震災後、旧市内に人口が集中するなどして待機児童が増加した。4月1日現在で78人と宮城県内では仙台市に次ぐ。保育所新設も相次ぎ、「保育士争奪戦」が激化した。
 保育士の給与水準は手取り月15万円前後と低い。離職率も高い。「人手が減れば1人当たりの負担が増す。悪循環だ」。高待遇の首都圏の求人が争奪に拍車を掛ける。
 国の施策には失望させられてばかりだ。政府は本年度、一定の経験年数の保育士に月4万円加算する制度を導入したが、対象人数は職員全体の3分の1と制限がある。「現場に不公平感を生み、チームワークを乱す。現場を無視した仕組みだ」。職員と話し合い、申請を見送った。

<環境整備を>
 被災地で子どもの育成に尽くす自負がある。園内にテレビは置かず、創作や体験を重視した保育を展開。避難先を転々としたストレスで態度が乱暴になった子が、園生活を通じて落ち着きを取り戻した。「保育士を確保できなければ、良い保育はできなくなる」
 空前の売り手市場の保育士就職戦線。養成する学校関係者も待遇改善の遅れを懸念する。
 宮城学院女子大の磯部裕子教授(幼児教育学)は「保育士は本来、小学校教諭並みの基本給が保証されるべきだ」と言う。重責に待遇が見合わず、数年で退職する卒業生を見てきた。
 保育を担う人材にこそ財源を充ててほしい−。現行制度でも低所得者の負担は減免され、無償化は収入の多い世帯ほど恩恵を受けることになりかねない。「保育士が安心して働ける環境を整備すれば全ての保護者に意味がある」と指摘する。(報道部・菊池春子)

[メモ]厚生労働省の4月1日現在のまとめでは、希望しても認可保育所などに入れない待機児童は被災3県で岩手178人、宮城790人、福島616人。保育士の有効求人倍率は各県で全職種平均を上回り、主な地域別(8月)では宮古地域3.83倍、石巻地域4.06倍、須賀川地域2.14倍。


2017年10月16日月曜日


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