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<衆院選 選択軸は何か>(4完)社会保障 制度不備 洗い出しを

本田由紀(ほんだ・ゆき)東大大学院博士課程単位取得退学。博士(教育学)。日本労働研究機構(現労働政策研究・研修機構)研究員、東大社会科学研究所助教授などを経て現職。専門は教育社会学。徳島市出身。53歳。

 衆院選(22日投開票)は中盤戦に入った。政権選択が最大の焦点となる中、有権者は国の将来に直結する重要政策を巡る論戦も注視する。「安全保障」「復興」「原発」「社会保障」の四つの選択軸について識者に聞いた。

◎東大大学院教授 本田由紀氏

 ほとんどの政党が保育と幼児教育の無償化を選挙公約に掲げた。安倍晋三首相は税と社会保障の一体改革の枠組みを変え、子育て世代に投資を集中する「全世代型社会保障」を目指すとうたう。

<控除縮小響く>
 所得に応じた配慮は必要だが、一律無償化の前に保育所の待機児童解消や幼児教育の質の保証が先だろう。各党とも強いスローガンでアピールするが、優先すべき政策に関する議論が飛ばされた。
 どの世代が苦しく、どんな援助が必要か。データを踏まえ、現行制度の不備を地道に洗い出すべきだ。例えば旧民主党政権時代の子ども手当導入に伴い縮小された16〜18歳の特定扶養控除は、安倍政権で埋め合わせされなかった。扶養控除から手当という流れは評価できるが、対象世帯の生活には控除縮小がボディーブローのように響いている。
 生活保護費の基準額引き下げなど、セーフティーネットは切り下げの方向に進む。介護保険制度見直しの影響で家族の介護負担も増えた。政府は財政難を理由に、資源の再配分で人々の生活を支えるという基本的役割を果たしていない。

<うまみが集中>
 膨らむ社会保障費の財源は、消費税増税分をつぎ込めば何とかなる問題ではない。日本では低所得者層と高所得者層の二極化が進む。生活が苦しい人が増えたのに、どこかにうまみが集まるシステムになった。富裕層や企業に対する課税強化が求められている。
 戦後日本は「教育」「仕事」「家族」の三つの社会領域が一方向的に資源を投入してきた。教育機関は企業に労働力を提供し、「教育ママ」に代表される家庭教育は公教育を支えた。企業は手厚い福利厚生や年功序列で上昇する賃金で従業員とその家族を支え、政府が社会保障で果たすべき役割を代わりに担った。
 バブル崩壊後は雇用の不安定化などが進み、3領域間の循環モデルは崩れた。だが、企業に依存してきた政府は長時間労働や不安定な非正規雇用の問題に強い姿勢で向き合ってこなかった。働き方改革を掲げながら裁量労働制の拡大などを進めようとしている。最低賃金も非常に低い。
 社会保障制度の原資となる税を支払い、社会保障の足りない部分を自分の収入でやりくりしてもらうためにも、きちんと働き続けられる環境は不可欠だ。

<女性活躍に壁>
 女性活躍施策も保守的な家族観を刷新しないまま「もっと働け」と言っていないか。2017年度の税制改正で配偶者控除の収入上限が103万円以下から150万円以下に引き上げられたが、「就労の壁」は残った。他にも壁があり、女性を非正規就労に押し込める圧力は依然として強い。家族には多様な形がある。どんな形でも家族を維持できる施策が求められる。(聞き手は東京支社・片山佐和子)


2017年10月16日月曜日


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