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<秋田弁護士殺害>秋田地裁、県警の責任認めず「警察官の対応に過失ない」

 秋田市の弁護士津谷裕貴さん=当時(55)=が2010年11月、自宅で菅原勝男受刑者(73)=殺人罪などで無期懲役=に刺殺されたのは警察官の不適切な対応が原因だとして、遺族が秋田県と菅原受刑者に慰謝料など約2億2300万円の支払いを求めた訴訟の判決が16日、秋田地裁であった。斉藤顕裁判長は「警察官の対応に過失は認められない」として県に対する請求を棄却した。菅原受刑者には慰謝料約1億6480万円の支払いを命じた。原告側は控訴する方針。

 原告側は13年10月に提訴。110番で現場に駆け付けた警察官の対応と死亡との因果関係が最大の争点だった。
 斉藤裁判長は、臨場した警察官が防刃チョッキや警棒を身に着けていなかった点に関し、「装着しても津谷弁護士の死亡は回避できなかった」と指摘。警察官が津谷弁護士を犯人と勘違いし、両腕をつかんだ隙に刃物で突き刺されたとの主張について「拳銃を手にした津谷弁護士を侵入者と考えても不合理ではない」として退けた。
 警察官の一連の対応を「秋田県では凶悪事件の発生が少なく、日頃から突発的な事案に対応するだけの訓練や意識の涵養(かんよう)が十分でなかったことから、現場で適切に対応できなかったことによる」と結論付けた。
 判決後、原告弁護団代表の吉岡和弘弁護士は「不当判決で残念としか言うほかない」と述べた。
 秋田県警の坂本幸一首席監察官は「基本的に当方の主張が認められたものと思われる」との談話を出した。

<こんな判決まかり通るなら警察いらぬ/元北海道警幹部で警察の捜査態勢を題材にした著書がある原田宏二さんの話>
 現場にいた警察官の状況認識や連携態勢の問題点を指摘しつつも「個々の警察官の不法行為を認めるのは相当ではない」としており、理解しがたい。一般人の感覚では警察に110番すれば助けてもらえると思う。こんな判決がまかり通るなら警察なんていらない。犯罪発生率の低い県で緊張感を維持するのは大変だが、上層部が現場の気の緩みを抑えるための訓練や指導をしなければいけない。

<結論に合うように「つまみ食い」したのではないか/立命館大法科大学院の松宮孝明教授(刑事法)の話>
 法医学鑑定という客観的な証拠に基づいて「警察官2人が津谷さんを取り押さえた際に刺された」とした原告の主張を、被告の菅原受刑者と警察官の証言のみで覆している。殺意を否定する受刑者の証言を別の箇所では不採用としており、結論に合うように「つまみ食い」したのではないか。被告側が否定していることのみで客観的証拠を覆している、とんでもない判決だ。

[津谷弁護士殺害事件] 事件の確定判決によると、菅原勝男受刑者は2010年11月4日早朝、離婚を巡る裁判で元妻の代理人だった津谷裕貴さんに恨みを抱き、拳銃や剪定(せんてい)ばさみを改造した刃物を持って津谷さん宅に侵入。通報で駆け付けた警察官が津谷さんを犯人と間違えて取り押さえた隙に刃物で突き、死亡させた。菅原受刑者は最高裁で無期懲役が確定している。


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2017年10月17日火曜日


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