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<衆院選東北>国難(4)自殺防止/経済偏重 孤立する弱者

電話で応対する秋田いのちの電話の相談員。自殺をほのめかす内容以外に、孤立や人間関係に悩む相談が寄せられる=秋田市内

 秋田市内にあるNPO法人「秋田いのちの電話」の一室で、2台の電話がひっきりなしに鳴る。「死んでしまいたい」「人間関係に悩んでいる」。深刻な声に、ボランティアの相談員が時間をかけて対応する。

<深刻な相談>
 1998年から自殺予防に取り組む秋田いのちの電話は、年始を除く毎日正午〜午後9時、相談に応じている。昨年度は1万2000件近くが寄せられた。病気や経済苦など相談者の悩みはさまざまだ。
 ここ何年かは、うつ病といった精神疾患を抱える人の電話も増えている。事務局長の阿部恒夫さん(69)は「家族や周囲から排除され、行き場を失っている」と言い、相談者の多くが孤立した状態に置かれた社会的弱者だと指摘する。
 「本当に死にたい人はいない。生きるすべがなく、死ぬしかないと思い詰めているそうした人たちを、みんなで支え合う意識が社会から薄れた」
 自殺を考えるほどの境遇にある社会的弱者の救済は本来、政治の役割だ。衆院選(22日投開票)では多くの候補者が経済対策を掲げる一方、自殺防止の訴えは鳴りを潜める。阿部さんは「政治はもっと目を向けてほしい」と不満を漏らす。
 2006年に自殺対策基本法が施行され、国は07年の自殺総合対策大綱で自殺を「追い込まれた末の死」と位置付けた。厚生労働省の人口動態によると、16年の全国の自殺者は2万1017人。最多だった03年の3万2109人から減少した。

<なお最下位>
 自殺者が多い秋田県は行政や医師会、NPO、大学などが連携して対策に取り組んだ結果、16年は240人と、ピークの03年の519人を大幅に下回った。一方で自殺率(人口10万当たりの自殺者数)は16年で23.8。14年を除き、全国最下位のままだ。
 7月に閣議決定された自殺総合対策の新大綱は自殺者数に関して「非常事態は継続中」と警鐘を鳴らす。だが、秋田県藤里町で自殺防止に取り組む住職袴田俊英さん(59)は「全国の自殺者が2万人台に減ってから、国の優先順位が下がった」と感じている。
 生きやすさを追求する社会への転換を訴える袴田さんは、「経済偏重の考えから抜け出せず、働かない人が阻害されている今の日本で、高齢者や若者が自分の存在意義を感じられなくなっている」とみる。
 厚労省の17年版自殺対策白書によると、5歳ごとに区切った年齢階級別の死因のうち、15〜39歳の5階級で自殺が1位だった。未来のある若者が自殺に追い込まれている。
 「それこそが『国難』だ」と袴田さんは言う。
(秋田総局・渡辺晋輔)

[メ モ]厚生労働省の人口動態によると、2016年の秋田県の自殺者の年代別割合は60代以上が51.7%と過半数を占めた。次いで40〜59歳が32.1%、40歳未満が16.3%。主な自殺の動機(16年・秋田県警調べ)は「健康(病苦)」が39.2%、「経済・生活」が11.3%、不詳を含む「その他」が49.5%。03年に36.5%と最も高かった「経済・生活」は近年、下がっている。


2017年10月19日木曜日


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