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<衆院選東北>完遂とは程遠い景色 被災者との意識と距離

新築された災害公営住宅の前で、避難生活を送る被災者に復興政策を訴える候補者=16日、福島市

 復興の完結を語る候補者と、終わりが見えない今を生きる被災者。二つの時計の針はかけ離れていく。

◎震災復興 争点を歩く

<5年後めどに>
 「5年の間に新しい街をつくる」。真新しい鉄筋コンクリートの建物3棟が並ぶ敷地に、福島5区に立つ自民党前議員の復興相吉野正芳(69)の声が響いた。
 福島市飯坂町の災害公営住宅で16日にあった街頭演説。東京電力福島第1原発事故の影響で浪江町から避難した約25人を前に、「浪江には帰還困難区域が残るが、国は古里を回復する約束をした」と力を込めた。
 帰還困難区域の復興を柱とした改正福島復興再生特別措置法が5月に施行された。国の負担でインフラ整備と除染を集中的に実施する「復興拠点」を設定し、5年後をめどに帰還開始を目指すとした。
 吉野がトップを務める復興庁の設置期限は2020年度末。政府は同庁の機能存続を検討する方針だが、具体化はしていない。演説で吉野は持論の「福島復興庁」に言及しなかった。
 対する希望の党前議員吉田泉(68)は原発事故に伴う避難者への支援を継続する必要性を指摘。16日にいわき市内で開いた個人演説会では「原発事故の後片付けができなければ復興は夢のまた夢」と訴えた。
 吉田が加速を求める廃炉の主要工程は目標の先送りが相次ぎ、ゴールは遠い。ともに新人の共産党熊谷智(37)、社民党遠藤陽子(67)はそれぞれ原発ゼロなどを主張する。

<原点忘れるな>
 東日本大震災の津波で大きな被害を受けた宮城県沿岸部。公選法改正に伴う区割り変更で、宮城5区には新たに南三陸町が加わり、石巻市、女川町、東松島市と共に津波被害が集中した多くの沿岸地域を抱える。
 自民党前議員の勝沼栄明(42)は15日、東松島市矢本地区であった個人演説会で、党の公約に沿い「復興庁がなくなるあと3年5カ月間で復興を加速、完結させる」と声を張り上げた。
 迎え撃つ無所属前議員の安住淳(55)。13日の石巻市での街頭演説で「震災で苦しい思いをした被災地を元気にする。復興特別会計を作った当時の財務相として、(復興特会の)残り4年間、責任を持ってやっていきたい」と力を込めた。
 人口減少、なりわいやコミュニティーの再生。被災地には長期的、持続的な取り組みや支援が必要となる課題が横たわり、完遂とは程遠い景色が広がる。
 岩手、宮城、福島3県で約4万4000人が避難生活を続ける中、震災後5回目となる国政選挙の投票日は、3日後に迫った。
 「11年目以降がどうなるか心配だ。国会は震災発生時の原点を忘れないでほしい」。衆院選への立候補を見送り、政界引退を表明した陸前高田市出身の民進党前議員黄川田徹(64)。家族を亡くした一被災者としての言葉が重く響く。(敬称略)


2017年10月19日木曜日


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