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現代美術家中本誠司の愛憎描く パートナーで支援者の大内さん刊行 無頼派理解の一助に

中本誠司の作品の前で著書を持つ大内さん=仙台市青葉区の中本誠司現代美術館

 さまざまな美術展や音楽演奏会が行われる仙台市青葉区の名物美術館、中本誠司現代美術館。名を冠された現代美術家、中本誠司(1939〜2000年)の知られざる素顔を、パートナーで支援者だった薬局経営大内光子さん(73)=仙台市青葉区=が書籍「野人、中本誠司。」にまとめた。愛憎入り交じる容赦ない言葉から、昔かたぎの芸術家の姿が浮かぶ。

 書籍は大内さんの回想を軸に、中本の言葉、中本が大内さんに出した手紙、交友のあった美術評論家や美術家らの言葉で構成する。
 中本は鹿児島県屋久島出身で、仙台を拠点に活動。スペインの画家で巨匠のピカソやミロ、ドイツの現代美術家アンゼルム・キーファーを敬愛し、その激しい気性同様、情熱的なタッチの平面作品(絵画)を数多く残した。「能辯(のうべん)(弁)にして行動力を伴った激情のひと」と評される通り、特異な人柄で知られた。
 本書からは無頼派の姿が見えてくる。生前売れなかった中本は「長生きしたら、世界がきっと僕の作品を認め、評価してくれるようになる。だから今はお金を使わせてくれ」と、大内さんに金を無心しては酒と議論、けんかに明け暮れた。
 たびたび暴力を振るわれた大内さん。何度も別れようとしながら結局、死別するまで26年間連れ添った。逝去から17年。「時の流れというものは苦く、忌まわしい思い出すらも、優しく風化させる力をもっている」と執筆の動機を記す。
 大内さんが費用と土地を提供して中本が建てた美術館は、国内外の美術家が寝泊まりし、初対面の老若男女が酒やコーヒーを手に語り合う不思議な空間となった。これこそが中本が大内さんに報いた唯一の遺産だと、本書は伝える。
 大内さんは「中本を知る人が少なくなった。作品や美術館を理解する一助になればいい」と話している。
 A5判、187ページ。4000円(税込み)。連絡先は同美術館022(272)7100。


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2017年10月20日金曜日


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