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<常磐線>富岡駅前に開業のホテル 復興のシンボルに「やっぱり、ここが自分のホーム」

富岡ホテルの屋上から町内を見渡す渡辺さん。奥はJR富岡駅=福島県富岡町

 竜田(福島県楢葉町)−富岡(同県富岡町)間の運行が21日に再開されたJR常磐線。6年7カ月ぶりの乗客の笑顔に、富岡駅前にホテルを開業した渡辺吏(つかさ)さん(58)は、東京電力福島第1原発事故からの復興への決意を新たにした。
 駅から徒歩1分。ビジネスホテル「富岡ホテル」は今月17日にオープンした。「フクシマ、最前線」のキャッチコピーを掲げる。
 「駅に電車が走る当たり前の景色がやっと戻ってきた」と渡辺さん。復興を目指す地域で、ホテルが現状を伝える拠点の一つになることを期待して「全国の多くの人に、列車で富岡に来てほしい」と望む。
 東日本大震災時、富岡駅前で父から受け継いだ食料品店を営んでいた。店舗兼自宅は津波被害を受け、町は原発事故で全域避難となった。
 避難先の福島県大玉村に仮設店舗を設けて事業を再開。仲間と「いつか富岡で何かやりたいね」と語り合った。帰町者が少ないことも考え、「ホテル経営なら成り立つ」と決意した。3年前だった。
 集まった賛同者は8人。町内でかつて、衣料品店、雑貨店、居酒屋、自動車販売店などを経営していた。異業種からの転身に、そろって他県のホテルにも出掛け、接客マナーや清掃に至るまで研修を重ねた。
 8人は「商店の精神」を大切にする。利用客一人一人と顔を合わせて会話する。誰もが気軽に立ち寄れる温かさが目標だ。
 地域のみんなが大切にしてきた「夜の森の桜並木」、津波で消失した「ろうそく岩」…。客室やレストランには古里の記憶を伝える風景画を飾っている。
 駅前は家々が消え、震災前の風景から一変した。それでも渡辺さんは「やっぱり、ここが自分のホーム」と揺るがない。
 「後戻りはできない。駅前のシンボルとなり、周辺のにぎわいや復興へとつなげていきたい」。地域の将来を担う覚悟が、ホテル創業者の顔ににじみ出た。(郡山支局・岩崎かおり)


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2017年10月22日日曜日


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