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<つながる じもとHD発足5年>(上)情報共有/顧客紹介件数 5倍に

カキの成育状況を尋ねる仙台銀の須藤さん(左)と古内社長

 仙台銀行ときらやか銀行(山形市)が経営統合し、設立した持ち株会社「じもとホールディングス(HD)」(仙台市)が、2012年10月に誕生してから5年が過ぎた。人口減少や市場の縮小が進む中、宮城、山形両県の人や情報、産業をつなぐ金融グループとして統合効果を発揮する。5年間の挑戦と今後の戦略を探った。(報道部・田柳暁)

 牡鹿半島の漁村をスーツ姿で駆け回る男性がいる。
 仙台銀地元企業応援部の須藤淳さん(35)。同行で唯一、日本政策金融公庫が認定する「水産業経営アドバイザー」の資格を持つ。

<カキの成育確認>
 9月下旬、須藤さんは石巻市狐崎浜地区でカキを生産・販売する株式会社「狐崎水産6次化販売」を訪ねた。同社の取引先の小売りや仲卸業者に情報を提供するため、水揚げしたカキの成育状況を確認した。
 狐崎水産は、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた同地区の漁業者が再起を誓い、2012年7月に設立した。当初は生産一辺倒だったが、主力取引行の仙台銀のアドバイスを踏まえ事業の多角化を決断した。
 15年には同行ときらやか銀との仲介で山形県内の小売り3社と取引を始め、販路を広げた。年間の生産量10トンのうち1割強が山形のスーパーに並ぶ。
 殻付きカキのインターネット販売も手掛け、評判は上々。今後は年間を通じた取引を見据え冷凍カキフライも扱う。出荷先の飲食店も両行から紹介を受ける。
 「カキむきしかやったことがないのに、パソコンを始めろと言われた」。古内新一社長(53)は冗談を口にしながら「付加価値のある商品ができ、収益力が高まった」と語る。

<業種拡大が課題>
 統合から5年。仙台、きらやか両行の情報共有が実を結んでいる。
 両行の全営業担当者が集めた情報は、じもとHDが一括管理。共有し、最適な商談相手を探し出す。16年度の相互のビジネスマッチング(顧客紹介)は559件で、統合直後の13年度の約5倍に上った。成約件数も約4倍の113件。膨大な情報が有機的に結合し、実際の取引につながった。
 一方、銀行幹部は「『売りたい』『買いたい』商品が明確で、つなぎやすい食品業界に偏りがち」と打ち明ける。支援する業種を広げることが今後の課題だ。

<強み見極め仲介>
 半導体部品製造のアベ工機(上山市)は今年5月、両行の仲介で登米市の機械部品製造会社と取引を始めた。
 阿部将治社長(40)は「半導体関連の受注は浮き沈みの波がある。今が順調でも将来の生き残りに備え、新たな企業と取引を始めたかった」と狙いを話す。
 同社は精密な切削技術に定評があり、少量注文にも対応できる。高い技術力がマッチングにつながった。
 両社を取り次いだきらやか銀営業本部のものづくり支援コーディネーター岩田義弘さん(63)は、山形県企業振興公社OBで製造業に明るい。「技術や生産量など製造業者の強みを見極め、的確なマッチングで地元企業を応援したい」と力を込める。


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2017年10月26日木曜日


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