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<震災遺物返却>返ってきたのは宝物 一つ一つに輝く物語

手元に戻った杯や写真を見詰める佐々木さん(左)と夫の守弥さん

 「宝物が返ってきた」
 陸前高田市の仮設住宅で暮らす佐々木英子さん(69)は9月、訪れた美容室に置いてあった物品リストから思い出の杯一式を見つけた。陸前高田市の返却事業で家族の元へ返った写真や物品。その一つ一つに、かけがえのない物語があった。
 佐々木さんが震災前に住んでいた気仙町今泉地区には古くからの風習が残る。地域の婚礼では、沿道の家々が振る舞い酒で新郎新婦を祝福した。
 津波で歴史的街並みは壊滅し、住民は散り散りになってしまった。再び手元に戻った杯一式は、佐々木さんにとって楽しかった日々そのものだった。
 最近になって、震災前に亡くなった兄が写った白黒の集合写真も発見した。複写してもらった佐々木さんは「兄さんが写った唯一の写真。そばにいるようでうれしい」と語る。
 菅野祥一郎さん(66)は、陸前高田市気仙小の教員時代の思い出を捜し出した。担任をした児童たちが卒業制作で取り組んだタイル画だ。縦横約1メートルのタイルに、地元伝統のけんか七夕で笛や太鼓を演奏する子どもたちが描かれていた。
 菅野さんが気仙小の校長だった時に震災が起き、校舎は全壊。玄関に飾っていたタイル画は行方不明になった。退職後も必死で捜したが見つからず、半ば諦めていた。
 「遅くまで学校に残り、絵の具まみれになりながら一緒に作った」と菅野さん。今でもタイル画に描かれた一人一人が誰か分かる。津波の犠牲になった教え子も。思い出が鮮やかな色を取り戻した。


2017年10月28日土曜日


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