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<五輪霧中 大会理念を問う>(2)公平性の壁/復興途上 考慮されず

「聖火リレー出発地を石巻市に」と、小池知事に要望書を手渡す村井知事(中央)と亀山市長=8月22日、東京都庁

 2020年東京五輪は28日、同年7月24日の開幕まであと1000日となった。大会誘致時に掲げられた「復興五輪」は具体像が見えず、東日本大震災からの復興途上にある東北の被災地は大会への関心が盛り上がらない。政府、組織委員会、東京都は成功の道筋をどう描き、被災地は祭典に何を求めるのか。風化する復興五輪の意味を問う。(震災取材班)=5回続き

◎自力でキャンプ誘致

 「宮城県、石巻市を代表して来た。要望をはねつけるのは非常に残念」
 8月22日、東京。村井嘉浩宮城県知事は、亀山紘石巻市長とともに落胆した。
 2020年東京五輪の聖火リレー出発地を東日本大震災の被災地石巻市に。2人は鈴木俊一五輪相と小池百合子東京都知事に相次いで要望した。だが、実際にリレーを企画する東京五輪・パラリンピック組織委員会は「公平性の観点からどの自治体とも会わない」。
 村井氏は「復興五輪」を運営する「仲間」と考えていた組織委の冷たい対応に戸惑った。被災地の思いが組織委に直接届かない。両者の隔たりは、事前キャンプ誘致からもうかがえる。
 「復興五輪」を掲げ、野球・ソフトボールは福島県、サッカーは宮城県で一部試合を行うことが決まったが、被災自治体のキャンプ誘致は既に頭打ち状態。被災地が広く競技に関わるには国際基準や法の壁、負担が大きいからだ。

<リスト入り難関>
 青森、岩手、宮城、福島の被災4県で誘致を表明したのは計32自治体。沿岸部を見渡すと、むつ、三沢、八戸、仙台、石巻、岩沼、いわきと楢葉(主体は日本サッカー協会と福島県)、相馬の計9市町にとどまり、岩手はない。
 キャンプ地は各国選手団が、組織委が作成した自治体リストから選ぶ。自治体がリスト入りを申請するには国際基準を満たす競技場を用意し、国際的な競技団体の審査を受ける必要がある。リスト公表後は、各自治体が自ら各選手団と交渉しなければならない。
 恒常的な人手不足が続く被災自治体の負担は大きく、沿岸で組織委のリストに掲載されたのは三沢市といわき市だけだ。
 相馬市はサッカーのキャンプ誘致を計画したが、施設が国際基準を満たさずリストにはない。施設改修は予算面で難しく、「市のホームページなどで海外に自力でPRするしかない」(市生涯学習課)。規格外でも来てくれる国・地域に、わずかな希望を託す。

<内陸自治体でも>
 被害が比較的小さい内陸の自治体も事情は同じだ。宮城県と県クレー射撃協会、同県村田町は町内の県クレー射撃場を五輪会場に誘致しようとしたが、2015年1月に断念。キャンプ誘致構想も立ち消えた。
 障壁は銃刀法。国外からの銃器持ち込みを禁じ、例外は国際大会で使う場合のみ。キャンプは対象外で、誘致するには五輪前に国際大会を開かなくてはならない。大会への銃器持ち込みも税関手続きは自治体が担う。「ハードルが高すぎる」と同協会幹部は嘆く。
 キャンプ誘致表明は全国で201自治体に上る。復興途上の自治体が、他の自治体と同じスタートラインに立てるよう支援は得られないか。組織委広報局は「それぞれの自治体が戦略を持って取り組むもの」と公平性を盾に距離を置く。


2017年10月29日日曜日


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