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<五輪霧中 大会理念を問う>(3)支援のずれ/お仕着せ施策に批判

津波で甚大な被害を受け、復旧復興工事が続く被災地=宮城県南三陸町

 2020年東京五輪は28日、同年7月24日の開幕まであと1000日となった。大会誘致時に掲げられた「復興五輪」は具体像が見えず、東日本大震災からの復興途上にある東北の被災地は大会への関心が盛り上がらない。政府、組織委員会、東京都は成功の道筋をどう描き、被災地は祭典に何を求めるのか。風化する復興五輪の意味を問う。(震災取材班)=5回続き

◎「復興ホスト」二の足

 「協力したい気持ちはあるが、道路やインフラの復旧はまだまだ。とてもおもてなしできる状況にない」
 東日本大震災で被災した宮城県南三陸町の佐藤仁町長の思いは複雑だ。
 「復興五輪」を掲げる2020年東京五輪に、岩手、宮城、福島3県の被災自治体に参加してもらおうと政府は9月、「復興『ありがとう』ホストタウン」を新設した。
 先行して募集を始め、選手の事前キャンプを受け入れるなどする「ホストタウン」には既に全国の252自治体が登録している。参加要件を緩和した復興ホストタウンは支援を受けた国や地域との交流を促すが、当の被災地の反応は芳しくない。
 復興の進み具合に照らすと「応募は二の足を踏まざるを得ない」と、佐藤町長は言う。

<人手も割けない>
 壊滅的な被害を受けた町中心部は工事車両が行き交い、土ぼこりが舞う。「復興した姿の発信」をうたう五輪までの復興事業完了は見通せない。町職員約200人、全国からの応援職員約80人で復興を急ぎ、人手を割ける余裕もない。
 町は、台湾、イスラエルといった多数の国・地域から病院再建などで支援を受けた。「まずは、足元の復興をしっかりと遂げることが最大の恩返し」。佐藤町長は現実を見据える。
 被災自治体の多くが程度の差はあれ、同様の事情を抱える。復興ホストタウンに応募する意向を示すのは現在、台湾との交流を計画する岩手県野田村など数自治体にとどまる。
 事務局の内閣官房は「小規模でも、被災地の実情に応じた交流の形を支援したい。悩んでいる自治体は相談してほしい」と話し、開催直前まで応募を受け付けるという。一方、別の沿岸自治体の担当者は「復興五輪の面目を保つために被災地が利用されていると感じる」と、お仕着せの施策を冷ややかに見る。

<「草の根」が大事>
 被災地との距離が縮まらないまま、五輪は開催へカウントダウンを刻む。危機感を抱くスポーツ関係者は少なくない。
 「このままでは、被災地の商店街に五輪ののぼりを掲げる程度で終わりかねない」。サッカーJ1仙台のスタジアムDJ大坂ともおさん(47)は危惧する。
 沿岸部の子どもがスポーツに親しむ機会づくりに取り組む大坂さんには、被災地の現状や大会効果をしっかり把握せずに、復興五輪が一人歩きしているように映る。「被災地のニーズを引き出し、五輪や復興とつなげるコーディネート役が必要だ」と指摘する。
 選手にとって「被災した人々からの応援は特別な重みがある」と大坂さん。支援してくれた国について地域の人が学び、選手を応援する草の根的な取り組みがあってもいい、と言う。
 「『参加することに意義がある』が五輪の精神。被災地が参加し、エネルギーを共有できる大会になるのかどうか。今が正念場だ」


2017年10月30日月曜日


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