岩手のニュース

<五輪霧中 大会理念を問う>(4)遺産の種/地域づくりの好機に

国際交流員の指導で地域の魅力を掘り下げる釜石商工会議所青年部のメンバー=20日、釜石市只越町

 2020年東京五輪は28日、同年7月24日の開幕まであと1000日となった。大会誘致時に掲げられた「復興五輪」は具体像が見えず、東日本大震災からの復興途上にある東北の被災地は大会への関心が盛り上がらない。政府、組織委員会、東京都は成功の道筋をどう描き、被災地は祭典に何を求めるのか。風化する復興五輪の意味を問う。(震災取材班)=5回続き

◎住民の自主性不可欠

 オーストラリア出身の女性講師の一言に受講生は意表を突かれた。
 「日本を訪れる外国人観光客が求めるのは、流ちょうな外国語での案内よりも地元の人から聞く『地域自慢』なんですよ」
 東京五輪の前年の2019年にあるラグビーワールドカップ(W杯)で、東北唯一の会場となる釜石市内で釜石商工会議所青年部が20日に開いたセミナー。市の「インバウンドおもてなしサポート事業」で助言役を務める国際交流員を講師に招いた。

<魅力を書き出す>
 受講したのは観光関連企業などに勤める20〜40代の若手10人。講師の「地域自慢ができるよう、まず釜石がどんな街なのかを考えよう」との呼び掛けに、「海の幸がうまい」「交通の便が悪い」などと釜石の魅力や弱点を付箋に書き出していった。
 おもてなし事業を推進する市オープンシティ推進室の石井重成室長は「W杯に続き東京五輪も視野に入れている。閉幕後も外国人観光客を釜石に呼び込める土壌をつくりたい」と語る。
 外国人をはじめ多様な人々が楽しめる街にしたいと思う事業者が増えれば「それが街の資産になる」と石井室長は期待する。
 世界的なイベントを一過性にせず、地域づくりの好機として生かす。釜石のような動きは、東日本大震災の被災地ではまだ少ない。
 東京五輪でサッカー競技会場の宮城県。三菱総研が設立した産官学連携のレガシー共創協議会(東京)は9月下旬、五輪の遺産(レガシー)構築に向けたフォーラムを仙台市で開いた。
 大手企業が五輪などに絡めた地域づくりのプランを自治体に提案し、採用を促すマッチングが目的。参加企業は観光やコミュニティー創出といった地域課題の解決を目標とした14プランのブースを構え、説明に当たった。

<誇りが生まれる>
 大日本印刷(東京)は香川県を舞台にした漫画の人気キャラクターを使い、地元企業と共同実施した観光振興策を紹介。ヤマハミュージックジャパン(同)は住民を主体とするバンドを養成し、地域コミュニティーづくりにつなげた千葉県船橋市の事例を発表した。
 「住民が自ら楽しみながら取り組めば地域への誇りが生まれる。地域の盛り上がりが周知されれば、被災地を敬遠しがちだった外部の人も訪れやすくなる」
 ヤマハミュージックジャパン音楽の街づくり推進課の佐藤雅樹課長は住民主体の取り組みの効用をこう説明した。
 フォーラムを共催した東北経済連合会(仙台市)の小野晋常務理事は「五輪などの大会を息の長い地域づくりのきっかけと捉えることが重要。地域課題の克服は、将来的な地域経済の発展にもつながる」と指摘する。
 復興五輪の成功には、被災地が自発的に取り組む意欲が不可欠となる。


関連ページ: 岩手 社会

2017年10月31日火曜日


先頭に戻る