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<秋田豪雨>人的被害ゼロ 気象台長と市町村長の「直電」が機能

災害を想定した訓練で、藤里町の佐々木文明町長に雨雲の状況を伝える和田台長=7月、秋田市の秋田地方気象台

 7月の「秋田豪雨」は人的被害がなかった。その一因とされるのが、秋田県内の市町村長と秋田地方気象台の和田幸一郎台長(59)が直接電話で気象情報のやりとりをする「ホットライン」。4月に着任した和田台長が全25市町村長と「顔の見える関係」を築いたことで、住民避難で迅速、的確な判断を迫られる首長に一定の安心感を与えた。
 県内に大雨が降った7月22日午前9時すぎ、和田台長の携帯電話が鳴った。「雨にどの程度の警戒が必要か」。声の主は北秋田市の津谷永光市長(66)だった。和田台長は「強い雨雲がある。間もなく(市町村長が避難勧告を出す目安となる)土砂災害警戒情報を発令する」と答えた。
 和田台長は翌朝までに14市町の首長と電話でやりとりした。津谷市長は「気象データは来ていても、台長から状況を直接聞ける安心感は大きい。避難所開設の準備や職員の手配に余裕が持てた」と振り返る。
 気象台と市町村のトップ同士が電話連絡する仕組みは以前からあった。だが、災害時に相手の忙しさを推し量って電話できなかったり、前任者から引き継いだ電話番号が変わったことに気付かなかったりと、「形骸化」していたという。
 「普段から顔が見える関係をつくっておかないと災害時に役立たない」。和田台長は秋田に着任後の2カ月弱で、25市町村長と携帯電話の番号を交換した。行動の背景には、盛岡地方気象台長だった昨年8月の台風10号豪雨の際、気象台の危機感が自治体に伝わらなかった苦い経験があった。
 20人が死亡、1人が行方不明になった岩手県岩泉町。8月30日午後4時47分に盛岡地方気象台次長から町総務課の幹部に電話があった。だが幹部は住民の電話に忙殺され、警戒を求める内容は町長に伝わらなかった。午後5時半ごろに大船渡市付近に台風が上陸し、避難勧告を出すタイミングを逃した。
 秋田でホットラインが機能したことに、気象庁も注目する。橋田俊彦長官は9月の定例記者会見で「秋田の事例をしっかりと展開していく」と説明。気象台長と首長の関係を強化する仕組みづくりを全国で進める考えを示した。
 局地的な豪雨などが各地で頻発し、一刻も早い避難の判断が求められる中、気象の専門家と行政のトップが直接連絡を取り合う重要性は増している。和田台長は「勉強会などで取り組みを共有し、議論を深めながらより良い方法を見つけていきたい」と話す。


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2017年10月31日火曜日


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