広域のニュース

<五輪霧中 大会理念を問う>(5完)元都知事 猪瀬直樹氏に聞く/震災復興 招致の原点

猪瀬直樹(いのせ・なおき)作家。政府の道路公団民営化委員、東京都副知事などを経て2012年に都知事に初当選。13年に医療法人グループからの現金授受問題で辞任。70歳。長野県出身。

 2020年東京五輪・パラリンピックの招致活動で指揮を執った猪瀬直樹元東京都知事は、東日本大震災が招致を決めたきっかけで、震災復興がアピールポイントだったと河北新報社の取材に語った。被災地で五輪歓迎ムードが低迷する原因について、「情報発信する人がいない」とリーダーの不在を挙げた。(聞き手は報道部・門田一徳)

◎被災地への関心 低下

 −「復興五輪」を掲げた理由は。

<希望つくりたい>
 「都が招致を決めたのは東日本大震災があったから。リーマンショック、震災、原発事故と続き、日本の社会に希望がなかった。東京だけでなく日本全体の希望をつくろうと考えた」

 −国際オリンピック委員会総会の最終プレゼンテーションでは「復興」の言葉がなかった。
 「震災復興が第一のアピールポイントだった。高円宮妃殿下は各国の被災地支援に感謝を述べた。次に気仙沼市出身の佐藤真海さん(現姓・谷、パラリンピック陸上女子走り幅跳びからトライアスロンに転向)がスポーツの力、被災地の頑張りをメッセージとして送った」

 −被災地は「招致に利用された」との不信感が根強い。
 「都は震災直後から被災自治体に職員を派遣してきた。職員も復興に五輪を重ね、被災地に寄り添ってきた。今は招致の努力を知らない人たちが五輪の準備をしている。被災地への思い、愛がなくなっている」

 −都知事として描いていた復興五輪の姿は。
 「被災自治体への職員派遣を継続して五輪の準備を支援するつもりだった。被災地の人たちの思いを受け止め、一緒に復興五輪をつくりたかった」

 −宮城県長沼ボート場を巡る会場選定や開催費の分担決定の経過から政府、組織委員会、都の連携不足を感じる。

<リーダーが不在>
 「大会を引っ張るリーダーがいない。森(喜朗)組織委会長の仕事は国に財政負担を求めることだが、全くできていない。安倍晋三首相はリオ五輪の閉会式でマリオ姿で登場して話題をさらったが、それぐらい五輪に関わる気があるのなら国として責任を持って予算を付けるべきだ」

 −沿岸の被災自治体は事前合宿誘致やホストタウン申請のノウハウもマンパワーも不足している。
 「都のオリ・パラ担当局がコンシェルジュのような役割を担えばよい。国と違い、都は職員がたくさんいる。都知事が決断すれば難しいことではない」

 −宮城県と石巻市は聖火リレーの出発地を石巻にするよう要望している。
 「招致段階でスタート地点の話まではしていないが、被災地での聖火リレーで重要な位置付けになっていた」(震災取材班)


関連ページ: 広域 社会

2017年11月01日水曜日


先頭に戻る