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<仙台いやすこ歩き>(69)おにぎり/一粒一粒味わい広がる

 台風一過の空はどこまでも清らか。「今日みたいな日は河原でおにぎりもいいよね」と、足取りも軽い。私もそうだが、画伯はいっそううれしそう。なにせ、今回のテーマはおにぎりで、画伯は無類のお米好きなのだ。
 やって来たのは仙台市太白区、長町駅近くの「米工房いわい」。店内には宮城県登米産ササニシキを始め、青天の霹靂(へきれき)や酵素栽培米コシヒカリといった、普段はあまり目にしない銘柄が並ぶ。そして、おにぎりがずらり。
 塩むすび、みそ焼き、シャケ、タラコ、ラー油とキクラゲ…、いやすこ心が騒いでくる。そこをぐっとこらえ、3代目店主の岩井一剛(かずよし)さん(36)にお話を伺う。
 「約70年前に祖母が西多賀で米屋を始めたのがスタートです」と岩井さん。1971年に、長町に移ってきたそう。米の輸入自由化以降、米が売れなくなり、卸をしても、スーパー相手に価格ではかなわない。米の専門店として何かできないかと思いあぐねた末、2000年におにぎりとお弁当を作って売り始めたのだ。
 こうしたおにぎり屋さんは、JAの「お米ギャラリー」を皮切りに仙台で開業が相次いだが、民間企業では同店が最初だったという。「最初は手探りで、おいしく食べていただけるよう試行錯誤しました。みそ焼きは当初ホットプレートで焼いていたのですが、今はガスで網焼き。香ばしいですよ」
 一番こだわっているのが、もちろんお米。時期によって銘柄も変える。9月下旬から10月末までは新米のひとめぼれ100%で、11月からは新米のササニシキとのブレンド。割合はその時々でかなり「微妙ですね」と笑う岩井さんは、お米についての探求心旺盛で、お米マイスターの資格も持っている。
 「ひとめぼれもササニシキも握りやすく、冷めてもおいしいという特徴があります」。岩井さんはお米を基本にさまざまな声に応えていきたいと、昨年、株式会社88サービスをスタートさせた。おにぎり・弁当・総菜の製造販売の他に、イベントでのケータリングサービスなどを展開する。
 「88の手をかけて栽培されたお米を大切に、さらに88の手をかけて皆さんに喜んでもらう仕事をしようと、この名前にしました」と話す。
 毎日3時半に起きてガス釜でご飯を炊き、5時ごろからおにぎり作り。「握るのは父と私です」と、岩井さんは奥の厨房(ちゅうぼう)で作り方を披露してくれた。
 120グラムという大きさにそろえるために、ご飯を型に入れて優しく押す。練り梅を入れ、手に取って握るのだが、手の指を広げて包み込みながら整えていく。両の手のあうんの呼吸とでもいうのだろうか、程よい力で握られていく。なんともリズミカル。
 「米と米の間に空気が残る程度に握ることで、口に入れるとほわっとほどけるんですよ。さっ、どうぞ!」。いやすこは間髪入れず「いただきます!」。米とのりの香りが混じり合い、その後にお米と練り梅の上質な味わいが口いっぱいに…。「お米の一粒一粒までおいしい」とお米画伯もうっとり。
 青い空とピカピカのおにぎり。広瀬川の河原に寄りたくなってくる。

◎弥生時代の遺跡で米の塊
 日本人がご飯として食べている米の品種は300種類以上もあるとされるが、通常、店頭では5〜10銘柄前後である。一般的なのはコシヒカリ、ササニシキ、ひとめぼれ、あきたこまち、はえぬき、まなむすめなどで、このうち個性的な味が特徴のコシヒカリは洋食と相性が良く、淡泊な味が特徴のササニシキは和食との相性が良いとされる。
 冷めてもおいしいという、おにぎりに適している銘柄としては、宮城県生まれのササニシキとひとめぼれ、そしてコシヒカリが挙げられる。
 おにぎりの歴史をひもとけば、弥生時代の遺跡からは、おにぎりと思われる米の塊の炭化したものが発掘されている。のりで巻いたおにぎりが作られるようになったのは、江戸時代以降とされる。
 古来より、保存食、携帯食として日本人が食べてきたおにぎりは、冷凍保存も可能。1個ずつラップに包み、保存容器に入れて冷凍庫へ。食べる時は、電子レンジの強で1個につき約2分加熱するか、蒸し器で約15分蒸す。

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 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。


2017年11月13日月曜日


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