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<丸森再耕 原発事故を超えて>循環社会 太陽光で問う

事業展開に思いを巡らすひっぽ電力の目黒社長(右から2人目)たち。再生エネを通じて地域の復興を願う

 東京電力福島第1原発事故による放射能汚染で、宮城県丸森町の基幹産業である農業は深刻な風評被害を受けた。舟下りなどが人気を集めていた観光への打撃も大きい。ゼロから、マイナスから、産業再建に懸ける町の人々の挑戦を追う。(角田支局・会田正宣)

◎産業(下)再生エネ

 216枚の太陽光パネルが丸森町筆甫の旧筆甫中校庭に輝く。住民有志が資本金を出し合って設立した県内初のご当地電力「ひっぽ電力株式会社」の復興発電所1号だ。

<将来は地域還元>
 筆甫地区は福島県に接し、東京電力福島第1原発事故の放射能汚染被害を受けた。旧筆甫中は南相馬市民185人の避難所となった。会社の設立には地域の復興と、原発に依存しないエネルギー循環への問題提起が込められている。
 2018年夏までに太陽光発電施設13基を増設する計画だ。全14基の年間発電量は約135万キロワット時、一般家庭約250世帯分に相当する。19年度の売り上げは約3400万円を目指し、将来的には収益の一部を地域に還元したいという。
 林業が盛んだった筆甫。ひっぽ電力の目黒忠七社長(65)は48歳で脱サラし、水質を浄化する竹炭や竹酢液を生産してきた。竹炭ブームを受けて売り上げは伸びたが、原発事故で百貨店などの取引が激減した。
 過疎化が進む筆甫に「原発事故がとどめを刺した」と目黒社長は嘆く。荒廃する農地の活用策として注目したのが再生可能エネルギーだった。
 かつて、経済成長のためには原発も必要だと考えた目黒社長だが、原発事故で一変した。「ふたを開けたらこんなに危険なものはなかった。再生エネへのシフトは世界の流れ。筆甫を再生エネの里にしたい」と力を込める。

<県内のモデルに>
 ひっぽ電力は今年5月、売電先を東北電力から、生活協同組合系の新電力「パルシステム電力」(東京)に切り替えた。パルシステムの販売電力は、太陽光やバイオマスなど再生エネの比率が約8割だ。宅配専門の生活協同組合「あいコープみやぎ」(仙台市)が10月に契約の取り次ぎを始め、11月15日現在で107世帯が申し込んだ。
 その一人、涌谷町の皆川文恵さん(42)は「原発か火力か、電気が何でつくられているか意識していなかった。地域に根差した再生エネをできる範囲で応援したい」と話す。
 原発事故当時、皆川さんは1歳2カ月だった三女(7)を抱え、放射能の影響におびえた。涌谷町の一部は東北電力女川原発(女川町、石巻市)から30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)内だ。自宅は圏外だが、女川原発の近さを感じる。
 「原発がなくても成り立つ雇用と経済を、みんなで考えるべきではないか」と皆川さん。「循環型社会が県内に広がるモデルになってほしい」と、ひっぽ電力にエールを送る。

[ひっぽ電力株式会社]福島県境の筆甫地区の住民7人が資本金350万円を出資し、2016年3月11日に設立した。出力50キロワットの太陽光発電所1号基を、住民など計約50人の資金協力と寄付約1100万円で整備、同年9月に稼働した。


2017年11月21日火曜日


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