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<丸森再耕 原発事故を超えて>「体験型」でファン開拓

沢尻の棚田を案内する早川さん(左)とツアー客。手作りの企画がリピーターを増やしている

 東京電力福島第1原発事故による放射能汚染で、宮城県丸森町の基幹産業である農業は深刻な風評被害を受けた。舟下りなどが人気を集めていた観光への打撃も大きい。ゼロから、マイナスから、産業再建に懸ける町の人々の挑戦を追う。(角田支局・会田正宣)

◎産業(中)観光振興

 赤いヒガンバナが郷愁を誘う。「日本の棚田百選」の一つ、丸森町大張の「沢尻の棚田」。仙台市からのツアー客20人が9月、美しい風景に心を和ませた。

<きめ細かく対応>
 ツアーは町観光物産振興公社の旅行部門「丸森“こらいん”ツーリスト」が開催した。特産の干し柿「ころ柿」作り、県内最大の生産地だった養蚕の伝統に触れる「大内佐野地織り」など体験型の企画を月1、2回行っている。
 公社が2015年7月に旅行業登録して2年余り。委託事業や手配旅行を含め、今年10月末までに約1700人分を取り扱った。
 県内唯一の舟下りである「阿武隈ライン舟下り」や旧豪商宅「斎理屋敷」と、名所に恵まれた丸森だが、東京電力福島第1原発事故で入り込みが大幅に落ち込んだ。“こらいん”ツーリストは一過性の大型観光バスツアーには頼らず、少人数にきめ細かく対応してリピーターを増やす作戦だ。
 ツーリスト所長として公社の旅行業登録を実現させた早川真理さん(45)は東京出身。小さい頃から宮沢賢治に引かれ、農の暮らしに憧れを抱いてきた。仙台市の出版社で勤務していたが、取材をきっかけに丸森町で暮らすようになった。
 06年には町のグリーンツーリズム事業の中心スタッフに起用され、推進組織の設立準備から運営までをリード。グリーンツーリズムの県内先進地という評価を得た。
 手腕を買われ、栃木県那須町の道の駅の支配人就任が決まったのが、原発事故の約1週間前。11年3月中旬、後ろ髪を引かれる思いで丸森を離れたが、町関係者らに声を掛けられ、3年後に戻った。

<映画ロケ誘致も>
 今春、早川さんはツーリスト所長を辞めて夢の実現に向けて踏みだした。18年夏にも、町内で農業体験の拠点となる農家民宿の開業を目指す。
 早川さんは「町を離れ、お世話になった人をがっかりさせたが、一度外に出て『夢をかなえるなら丸森しかない』と確信した。蓄えた経験を生かしたい」と意気込む。グリーンツーリズム再生の担い手として期待がかかる。
 訪日外国人旅行者(インバウンド)誘致の動きも進む。3月、県南4市9町への誘客を図る観光地域づくり推進法人「宮城インバウンドDMO」が県内で初めて丸森町に設立され、タイ映画ロケの誘致に乗り出すなど試行錯誤している。
 町は13年、サイクリングを通じて町の魅力を体験してもらう「サイクルフェスタ」を始めた。東日本大震災後に増えた自転車愛好家を呼び込み、交流人口を拡大する狙いだ。
 町商工観光課の木皿理課長(59)は「丸森の売りであるグリーンツーリズムを軸に、あの手この手で客層を広げる。原発事故の印象を拭うには時間がかかるが、丸森を応援してくれるファンを増やすことが大事だ」と力を込める。ピンチをチャンスに変えるべく、戦略を練るのに余念がない。

[丸森町の観光客数]原発事故前の2010年は約55万4700人、11年は約40万7700人と約27%の減。舟下りは約9700人から約2500人と約75%減り、斎理屋敷は約2万4200人から約1万1200人に半減した。観光客は13年に約57万1300人と事故前水準を回復している。


2017年11月20日月曜日


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