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<丸森再耕 原発事故を超えて>「タケノコは象徴」産地維持へ 地域一丸で

いきいき交流センター大内で新鮮な野菜を手に取る家族連れ。直売所は地場産品の安全性をPRし、風評の払拭に努めた

 東京電力福島第1原発事故による放射能汚染で、宮城県丸森町の基幹産業である農業は深刻な風評被害を受けた。舟下りなどが人気を集めていた観光への打撃も大きい。ゼロから、マイナスから、産業再建に懸ける町の人々の挑戦を追う。(角田支局・会田正宣)

◎産業(上)風評払拭

 丸森町内の竹林1ヘクタールで10月、古い竹が切られた。竹林に残る放射性物質を低減させる県の除染作業の一環で、約8000本のうち5000本を伐採。11月末には、セシウムの吸収を防ぐ塩化カリウムを散布する。
 町は原発事故で、特産のタケノコの出荷が規制された。これまでに解除されたのは8地区のうち3地区。来春の検体検査で解除が進むかどうか。竹林の除染が鍵を握る。

<タケノコは象徴>
 町内で最も早く2014年に出荷が再開された耕野地区の耕野たけのこ生産組合は、出荷基準を国の基準(1キログラム当たり100ベクレル以下)より厳しい1キログラム当たり65ベクレル以下に自主的に設定し、全量を検査する。
 国は当初、町全域で100ベクレル以下になるまで規制を続ける方針だった。だが、それでは解除の見通しが立たないと、組合や町が地区ごとの解除を要望。地区別の検査を経て解除が実現した。
 協議に当たった谷津寿彦前組合長(74)は「東電の補償をもらっても、生産しなければ産地として人心が荒廃してしまう危機感があった」と振り返る。組合はタケノコ狩りを休止しているが、昨年再開した水煮加工は回復途上にある。
 竹林約2ヘクタールを有する農業八島哲郎さん(55)は規制中も竹林の手入れを怠らなかった。産地の実情を知ってもらおうと、販売できないタケノコを掘って捨てる作業に「かぐや姫探し隊」と名付け、ボランティアを募った。
 八島さんのタケノコ販売額は、原発事故前の約4割にとどまる。「タケノコは丸森の象徴。ブランドを傷つけられた被害は大きい。早く全町で解除になってほしい」と待ち望む。

<地道な努力 結実>
 風評被害は町を代表する直売所も直撃した。06年度に開業した大内地区の「いきいき交流センター大内」は10年度に6170万円あった売り上げが、震災後は約3割減少した。
 生産者ごとに農産物全種の放射性物質を測定。仙台市でのイベントに参加して丸森産の農産物をアピールした。エゴマドレッシングといった新商品も積極的に開発。風評を払拭(ふっしょく)する地道な努力が実を結び、15年度に原発事故前の水準を回復した。
 「前は『放射性物質を測っているか』と聞かれたが、最近は放射能の話題は出なくなった」。直売所を運営する大内活性化施設管理組合の塩沼邦夫組合長(74)はほっとした表情を見せる。
 組合は住民約190人、地区全世帯の約4分の1が出資して設立した。塩沼組合長は「自分たちで作った施設との意識が強い。復興は道半ばだが、地域一丸で乗り越える」と前を向く。

[丸森町の農産物直売所販売額]10年度が1億5130万円(10カ所)、11年度は1億3490万円(11カ所)、12年度は1億1430万円(9カ所)。14年度に1億6680万円(同)と原発事故前の水準を回復した。16年度は1億9000万円(同)。


2017年11月19日日曜日


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